ムカデ競争
ととむん・まむぬーん
それぞれの
「ムカデ競争は中止です」
今日のホームルームで先生は突然そう言ったんだ。どうやら隣の組で練習中に事故があったんだって。
ボクたちのチームはヨシオ、加奈ちゃん、そしてボクの三人六脚、先頭を行くヨシオに加奈ちゃんが、しんがりのボクが加奈ちゃんに手をかけるんだ。
クラスで、いや六年生の中で一番背が高いヨシオ。そんなヨシオの肩に加奈ちゃんの手は届かないから、加奈ちゃんはヨシオの腰のあたりを掴むんだ。
最初のうちは恐る恐る手を掛けていた加奈ちゃんも、今ではしっかりとヨシオの腰につかまるようになったよ。
そしてボク。
ヨシオにくらべたらぜんぜん背が低いボクは加奈ちゃんの両肩に手をのせるんだ。女の子の身体に初めて触れるボクは、練習のたびにいつもドキドキ。
そして体操着に包まれた加奈ちゃんのその肩も、ボクが手をのせるたび少しだけ緊張してたみたい。
スタート!
ヨシオが加奈ちゃんを気にかけながらもずんずんと進んでいく。加奈ちゃんもしっかり前を見てヨシオの腰をグッと掴んでリズムを取りながら足並みを揃えていく。
そしてボクは加奈ちゃんをしっかりと支える。転ばないように、倒れないように、そう、縁の下の力持ちのように。
でも、ムカデ競争は中止なのかぁ……。
今日からはもう、いっしょに練習することはないんだな……。
――*――
ムカデ競争が中止なんて……。
私のパートナーは、あのヨシオくん。なんてったって六年生でいちばんの人気だもん、私も鼻高々だったわ。
だから毎日放課後になると、
「加奈ったら、うらやまし過ぎぃ――」
なんて言われちゃって、恥ずかしいやらうれしいやら。
放課後の練習も楽しかったなぁ。
ヨシオくんは背が高くって、肩の高さは私の目よりもずっとずっと上。だから私はヨシオくんの腰のところを掴んでたの。すると見学してる女子も大騒ぎだったわ。
でもね、こっちはもうドッキドキ。
男の子とこんなことって初めてだし、ヨシオくんはどんどん行っちゃうからついていくのがやっとだし、おまけに
それでも毎日の成果なのかな、いい感じで合わせられるようになってきたんだ。
でも、ムカデ競争は中止なのよね。
ヨシオくんとの練習、毎日楽しみだったから残念だなぁ。
そうだ!
放課後に時間ができたし、ヨシオくんを誘って残念会をやろうかな。
えっ?
もうひとりは、って……いいの、いいの、せっかく中止になったんだから。
あっ、そんなこと言ってたら、ヨシオくんが来たわ。
「ヨシオく――ん、いっしょに帰ろうよ――」
ムカデ競争
―― 完 ――
ムカデ競争 ととむん・まむぬーん @totomn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます