第121話 「好き」を取り戻したくなってきました

 「好き」をないがしろにしていると、自分がすり減っていきます。

 不特定多数に向けて発信しているうちに反応を気にするようになっていって、修飾過多のややこしい言いまわしでこそ自分の好きが表現できるのに、そうではなくて小ぎれい小間切れ小ざっぱりと一目見てすっきりとわかりやすいような印象になるようにまとめてしまっています。

 わかって欲しい欲に絡めとられている時は、特にその傾向が強くなっています。

 それが重なっていくと、ある時、どーんと沈むか、どっかーんと破裂するか、極端な表現をして自己嫌悪に陥ることになります。


 さーっと引いていく人波を経験したこと、ありませんか。


 自分としては深淵から出てくる語りのつもりだったのに、周りにイメージ通りでないという印象を与えてしまった模様で、受け取り手が、そそくさと、すり足で、後ずさりして、遠巻きになっていって、声が届かなくなっていく。

 旧来の友であれば直にきくこともできますが、中くらいの親しさだった場合どうしちゃったのときくわけにもいかず。

 幾度かそういった場面を経験するうちに回避するスキルも身につけましたが、釈然としない時もあります。

 せめて創作の場では好きを好きなように書き散らかしたいです。

 とくに何があったというわけではないのですが、日々の疲れが降り積もると脱力感と共に、はぁ~っとなるのでありました。


 気晴らしにあまり読んだことのないタイプの海外の本を読んでみました。

 コージーミステリ。

 まるっとまとめると、日常生活で起こる事件を素人探偵の女性主人公が解決するライト・ミステリのことです。美味しそうなグルメ描写も特徴の一つです。アガサ・クリスティーのミス・マープルのシリーズをイメージするとぴったりきます。

 コージーという言葉は「居心地がいい」という意味がありますが、殺人事件が起こるのに読後感に居心地のよさが提供されるというのはどんなもんなんでしょうか、と無粋なことは置いておいて気軽な読書を楽しみました。


 とはいえ、気晴らしといいながら何かと仕事絡みにつなげてしまいがちです。

 今回はイースターについて調べものをしている最中に気晴らし欲が起って、イースターを取り上げた小説がないかなと検索をしました。

 見つけたのは『春のイースターは卵が問題』大統領の料理人シリーズ3(原書房 ジュリー・ハイジー著 赤尾秀子訳 2016年)。

 アメリカ合衆国の架空の政権のホワイトハウスの初の女性エグゼクティブシェフが主人公です。3を読んでから1を読んだのですが、多忙なホワイトハウスのキッチンの陣頭指揮をとり、レシピを考え、料理し、事務作業をこなし、大統領夫人と親しく会話し、イベントの食でのおもてなしに走り回りながら、次から次へと殺人及び未遂事件が起こるのに巻き込まれ、シークレットサービスの彼氏との恋愛に悩みと、とにかく大忙しなのです、主人公さん。

 これだけ事件にまきこまれたら、危なっかしくて大統領一家の食事を任せられないのではないかと思うのですが、そこは日常系ファンタジー、主人公が活躍してみんなの危機を回避するので全て良し、です。

 グルメシーンで頻繁に登場するのは各国の文化に合わせた食事内容への言及です。

とくに食材に関しては、アレルギー食材は事件に関わる事態にもつながるので必ずレシピの相談場面で確認されますし、ビーガンメニューや宗教上配慮の必要な食材についても出てきます。日本でもこれらのことは浸透してきてますよね。


 さて、グルメでライトな謎未満ストーリーはいかがでしょう。

 第2回角川武蔵野文学賞エントリー作品の『荒神こうじんさんの武蔵野ぬくもりうどん』では、武蔵野グルメの一つ「うどん」を取り上げています。

 よろしかったら、ご賞味ください。


 『荒神さんの武蔵野ぬくもりうどん』<完結済>

 https://kakuyomu.jp/works/16816700427039758563

 キャッチコピー

 武蔵野のぬくもりたっぷりのおうどんさんは、荒神さんからの贈りもの


 ……武蔵野の一角萱原キャンパスタウンにある実家の食堂の閉店危機を回避するため、新機軸の武蔵野名物うどんの試作を続ける大学生小原鈴菜と幼なじみの芦辺穂香――鈴菜と穂香は力を合わせて荒神さんからのいただきものを使って新作メニュー作りに新たな意欲を燃やすのだった……


 武蔵野を舞台にした作品、武蔵野語りシリーズは、下記でご覧いただけます。

 よろしかったら、ご一読を!

 https://kakuyomu.jp/users/mikoma/collections/16816700426457922977










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日々記すの記 美木間 @mikoma

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