エピローグ 栞
気が付いた時、栞の目に初めに入ったのは自分の顔を心配そうに覗き込み友人の姿だった。
癖の強い茶髪とつり目のせいで何となく猫を連想させる顔立ちの少女は、栞が目を開けたのを確認すると安心したように胸を撫で下ろした。
「栞!大丈夫か?全然起きないからビックリしたぞ?」
「……ユリ…?あれ?………私どうしたんだっけ……?」
「覚えてないのか?栞は開かない図書館のドアを無理矢理開けようとしてすっ転んだんだぞ?」
「それはまた……何とも間抜けね…私……。」
「そうだな。私も最初は爆笑していたからな。でも、全く目を覚まさないから凄く心配したぞ?」
「それはどうも…ねえ、それで廃図書館の悪魔は?」
「栞…話聞いてたか?図書館は開かなかったんだ。ガッチリ施錠されてるみたいでな。だから確認は出来なかった。」
鈍い頭の痛みを感じつつも上体を起こす栞、まだ脳は目覚めていないようでどうも霧がかかったようにぼやぼやする。
いまいちここに来た辺りからの記憶が曖昧だった。
ユリには盛大にすっ転んで気絶したと言われたが、いまいち実感が湧かなかった。
「大丈夫か?栞。」
「大丈夫…と言いたいけれど、ちょっと自信ないわ…。」
「ごめんな。私のわがままのせいで、噂の図書館には入れなかったし今日は帰ろう。ほら手。」
差し出された手を掴み立ち上がる。
その際、自分から何かが落ちる。
「栞、何か落としたぞ?」
「うん、何だろう?……封筒?宛先は…
「そんなの持ってたっけ?」
「……いいえ…。」
「何か君悪いな…て!開けるのか?」
「うん…何か気になるし…。」
ユリが「やめといた方が良くないか?」と注意を促すが、栞はソレを無視して封筒をあけた。
中からは薄い金属で出来た一枚の栞が出てくる。
銀製でアンティークな装飾が施されており、梟の絵の描かれた栞だった。
「栞宛の封筒から栞が出て来た…高度なダジャレか何かか?」
「さあ?でも、まあ、綺麗ね…これ。」
「そうだな…でも持って行くのはやめた方がいいんじゃないか?やっぱり不気味だし。それに廃墟の物を持ち帰ると霊も連れ帰るって言うぞ?悪魔に取り憑かれるかも…。」
友人のそんな発言に栞はくすりと笑う。
「そうなったらそうなったよ。」
友人の制止も無視し、栞はそのまま旧校舎の外へと歩いて行く。
何となく、この梟が描かれた栞をこんな埃臭い所から早く出してあげたくなったのだ。
外はここへ来た時同様真っ暗で、丸い月の光が大地を照らしていた。
少女は夜空に栞をかざす。
まるで、銀製のソレに描かれた梟に夜空を見せるように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます