【R→ЯGW 0-X】エピローグ 誰かの他愛もない会話

【ЯGW 1】

木沢 俊二:ラグナロク 〜神々の運命と選択〜

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889478619/episodes/1177354054889478626


【ЯGW A】

木沢 俊二:G. World

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889485012/episodes/1177354054889485371



 はぁ、はぁ、はぁ……。


 私は走っていた。果てしない、この闇の中。


 ——あと少しだ、あそこまでたどり着けば……。


 次の瞬間、締め上げられる腹、握られた喉……


 ——まただ、やっぱりヤツが……

 

 振り返った私の目には二つのアルファベット——


 GW。


 続きは…………


「ねえ、もういいでしょう。いい加減にしたら?」


 何者かが俺の頬をパチンとひっぱたいた。

 その衝撃で視界が揺らぐ。

 そのお陰か、GW以外の文字が見えて来た。


・【RGW】リレー小説 キーワード「GW」告知・参加申し込み用ノート

・逆走企画【ЯGW】 余力ある方集まれ〜! 場外乱入も歓迎♪


「これ、あなたが企画して呼びかけたんでしょ? こんなくさい演技、二回もしないでよ」


 闇に浮かぶぼんやりとした、まるでスライムのような生命体はそう呟いた。


「あぁ、すまん。つい力が入ってしまった」


 その紫の塊は、まるでフラダンスの様にそのはしをゆらゆらさせた。目元が少し微笑んでいるようにも見える。


「それにしても良かったわね、GW内に何とか終わって。最後は危なかったわ、まさか子どもの宿題終わってない事件と、乳児泣き止まない事件が重なって、自分の企画なのに自分のせいでGWに間に合わなくなりそうになるなんてね」


 リアルな皮肉。反論出来ないその事実に俺もつい苦笑いをかみ殺す。


「そうだな、越智屋さんの子どもとの戦いの合間に頑張って作品作られる苦労がつくづく身に染みたよ。それにしても越智屋さんからのナイスアイデア、素晴らしかったな、チーム制」

「そうね、あれは本当にすごいアイデアだったわ。そもそもお忙しい方だから参加自体無理かと思ってたけど、期待通りすごい作品を書いてくれたわね」


 もやもや揺れる紫の、まるで陽炎にも見える物体は大きく丸を描いた。good jobの合図なんだろうか。


「ああ、RGW2の新巻へもんさんの展開もすごかった」

「そう、あれは斬新だったわ。しかもアルコール注入後だったらしいわよ」

「アルコール? 本当か、それは。折り返しも見事にまとめてくださった。おかげで書きやすかったね」

「そうね、ラストも重要だけど、ラスト一歩前もかなり重要なポジションだという事がこれで分かったと思う」


 俺は二度、うんうんと頷いてから続きを呟く。


「RGB 3ではここのかさんの展開でより一層深みが出たね。そういえばここでマリーが出て来たんだっけな。そして後に只野ヒトに成り下がる人物がハゲってのもここだった」

「ええ、そうよ。ハゲ気味ね」

「ふふ、そうそう、あくまでハゲ。しかもこのハゲが単なる罵声かと思ったら、竹千代さんのRGW4のところでその侮辱がとんでもないことになるなんて……しかも急展開! GWを取り返しに行こうか……胸に刺さるね」

「ええ、南河原 候さんのところでは主人公とawの凄まじい戦いが見られた。特に最後の『化け物は私か』にはしびれたわ」

「あぁ。そして言わずもがな、グランドフィナーレ。伏線を見事にまとめて、さらに折り返しでもまた読者を惹きつける始まり方。越智屋さんは前から思ってたけどきっと只者じゃあない。他の作品のクオリティも高い、まあ何と言っても一番はタクティカルペンだがな(笑)」


 生命体は闇のもやを∞の形に揺らしながら、考え込む素振りを見せた。


「ええ、そうね。あの方にかかればこのままライトノベルとかさっと書いて出版しちゃうんじゃないのかしら。今のうちにサインもらっておけば?」


 そうだな、私は軽く笑みを返した。


「A-Eも良かった。同じ出だしで全く違う展開だったな」

「そうね、どちらかというとこちらは王道のストーリーだったわね。一万円札はあなたの好きな展開だったでしょう?」

「あぁ、不思議な夢の後に不可解な現象。短い話の中に散りばめられた謎の伏線。リレー小説の模範的な展開だったね。そして次にあの人が現れる」

「……そうあの人ね」


『ウニ野郎!』


 思わず声が重なった。


「昼からビール飲むぶっ飛びキャラはかなりツボだったよ。しかもちゃんとその後の展開も素晴らしい」

「次が秋夜檸檬さんだったわね。ここで命名しました、ウニ野郎! このキャラ、後の人が放っておくはずが無いわ!」

「あぁ、そして牧野さん。実にお見事だった、本当に感動したよ。見事プロローグへ繋げつつ今までのストーリーも拾い上げる。やはりあの方も只者ではないよ、きっと」


 目の前に浮かぶ不定形のそれは肩をすくめる形を作った。まるで人間そっくりだ。


「何言ってるの? そりゃそうよ、だってKAC(Kakuyomu 3rd Anniversary Championship)では編集部賞も獲った方よ? あなたのイチオシは確か……」

「『数多の誰かの物語』。俺はあの話はいつか世に出ると踏んでいる。そしてその時は言ってやるんだ、『俺は前からイチオシだったんだ』ってね」


 生命体の紫もやもやが一気に下向きになる。はいはいそうですか、そんな声が聞こえて来そうだ。


「そういえば折り返し企画。あれは最初から考えてたの?」

「いいや、そもそも往路だけでGW内に終わるかどうかあやしかったからね。思ったより早く済んで、しかもここのかさんからのさりげない独り言『リレー続きましょうか!』があったからだよ。希望者だけでもやってみても面白いかもしれない、そう思ったんだ」

「こうして逆走が始まった——」

「そう、でも思ったんだ。そうすると最後は自分に収束する。それってかなりプレッシャーでかいんじゃないかって」

「そうね」

「でもね、だからこそ面白いんじゃないかって。だって牧野さんや越智屋さんにあんな素晴らしい結末見せられちゃ、自分もちょっとやる気になっちゃうでしょ? だから本当は最初は二つのストーリーを最後一つのエピソードでまとめられないか、まで考えた」

「うそ!? それはそれは……かなり頑張ったね」

「あぁ、でもやっぱりそれぞれの話はそれぞれの方向を向いていたし、敢えてそれをまとめる必要はないんじゃ無いかって、そう思ったんだ。だからこのエピローグはその名残みたいなものかな」


 まるで風にそよぐ煙のような紫のもや。確かにそこに目は無いのに、何故かじっとこちらを見つめているような気がした、少し頷いているようにも見える。


「でも、折り返しもなかなか面白かったわね。越智屋さんの折り返しなんか、もう完全に世界観が出来上がってしまって、これ本当に即興かなって思うくらい」

「本当だよ。元神が只野人志になってりりすたんを見てハアハア言うだけで、もう絶対面白い展開になるよ、本当にすごい。そして4では案の定やられる……」

「そうね、期待を裏切らない、警察沙汰。やっぱりハゲ気味さんにはこういうのがお似合いなんだろうね。しかし物語はそこから一気に神様達の世界へ!」


 紫に揺れ動くそれが、まるで手品の炎のように一瞬で、ボワッ、と昇天した。それから時を待たずに、ゆっくりとそしておぼろげに元の位置に戻る。


「新巻へもんさんのパスは見事だった」

「ええ、私もそう思う。『ボクはボクの務めを果たす』の響きが良いわよね、なんか運命と対峙する、みたいで。マリエルちゃん、頑張れ! って応援したくなる」


 俺はあの時のことを思い出していた。新巻へもんさんからのバトンを受け取った時の、あの高揚感を。


「なんかね、不思議な感じだったよ。最高のお膳立てをしてもらって……例えばサッカーで言えば、アシストをもらって『さあ、今だ、決めろ!』って言われてるみたいで」

「へえ、サッカーしたことないのに良く分かるわね」

「あの……さすがに観た事くらいはあるわ! でもストーリーは正直悩んだ、せっかくなら越智屋さんや牧野さんみたいにカッコ良く決めたいでしょ」

「そうよね……でもその末があの結末?」


 苦虫を噛み潰したような俺の表情からほんの少し笑みがこぼれた。


「あぁ、自分でも正直こんなことになるとは思わなかった。でも創作って面白いよな、材料とテーマが揃って色々考えていると、当初自分でも思いもよらなかった結末が出来上がる。ただね、一つだけ心配な事があるんだ」

「心配?」

「あぁ、全国のりりすたんファンから刺されない……か」


 一瞬だけじっ、としていたその影は、再びめらめらと楽しそうに踊り始めた。


「ははは、それならもう遅いわ。新巻へもんさんによると全国に800万人はいるらしいから、りりすたんファン。まあせいぜい駅のホームでは先頭に並ばないことね」

「あぁ、そうだな。気をつけるよ」


 俺は懐かしい思い出を思い返すように、一つ息を吐いた。


「Eの最初は牧野さん」

「ええ、コメントにもあるけれど、あのエピソード、実はたくさんの伏線があったみたいね。やり方次第ではいくらでも膨らませられる。ストーリーを作る上でとても勉強になったわ」

「そうだね、そして秋夜檸檬さん。あの二人のことをニュースで知る。この設定実は結構よく使うんだ、読者だけはその事実を知っている、っていう状況。次に何か起こるのはこっちじゃないか? っていう恐怖が駆り立てられる。ちなみに秋夜檸檬さんはGWは旅行に行かれてたはずなんだけど、合間を縫って書いてくれたのかな? 本当にありがたいことだよ」

「ええ、そして来ました仲乃 古奈さん。ファンタジーとそしてやっぱり」


『ウニ』

 

 またもや響きが一致した。


「もうなかなかウニは頭から離れない、ある意味これもウニ病か?」

「そうかもね」

「そして@wizard-Tさんの『俺はまずい?』でついにウニの正体が明かされる。そして謎の女性……最後のバトンはバトンじゃなくてウニの殻を渡された気分だったよ」

「へえ、ウケる。しかもあなた、最初殻にかなり動揺してたでしょ?」

「あぁ、かなりね。一瞬『殻?? え、マジ??』ってなったけど、よく考えてみたら殻って言ったらあれしかないな、と思って」

「そうね、何はともあれ完結お疲れ様、みなさんに感謝しなくちゃね」

「本当だよ。リレー小説は面白いし、スキルアップにもなるからもっとやっても良いと思う。出来たらカクヨム運営さんが場を設定してくれるといいんだが」

「場?」

「そう、自主企画みたいに、参加者登録してマスターが日にちや期限、バトンの渡す順序などを設定する。期限までに投稿がなければ自動的にスキップする、などなど」

「へえ、送ってみたら? お得意の運営様への『要望を送る』へ」

「そうだな、今度送ってみよう。そうそう『要望を送る』で思い出した、俺が勢いで書いた『カクヨムが「なろう」に勝てない5つの理由』がやけに色々な方から応援頂いたり、コメントいただいたりするから、何でかなって思ったら、創作論・評論っていうかなりマイナーなジャンルの週間ランキング4位に入ってたよ。嬉しいんだけど、でも何で? って感じ。そもそもランキングって何なんだろうね、アクセス数?」

「知らない。ちなみにそれ自慢?」

「いやいや、そうじゃない。あの話書いてから、なんかスイッチ入っちゃってさ。本気でweb小説って何だろう、web小説にしか出来ないことってなんだろう、web小説を盛り上げるためにもっと考えてみるべきなんじゃないかなって思ったんだ。その一つがこれ」

「これって、まさか——」

「そう、リレー小説。これって紙媒体ではなかなか難しいからね、昔はノートとかでやってた人もいたのかな?」

「ええ、交換日記やブログなんかでやってたらしいよ」

「へえ、そうなんだ。それでさ。俺今、もっと他のも考えているんだよ」

「他の? リレー小説以外に?」

「そう、例えば、マルチエンディング小説。かまいたちの夜みたいな」

「あぁ、あれね。選択肢によってストーリーがいくつも変わっていくやつのことね。小さい子向けの紙媒体の本だったら昔はよく見かけたけど、今でもあるのかしら?」

「どうだろう、web小説でやるなら、選択肢をリンク先で繋ぐ感じになるだろうね。面白そうじゃない? でもかなり手間がかかるのが難点」

「そうね、ストーリー自体を短くすればいいんじゃない?」

「あ、それ名案だ。今度やってみよう、他にもね、こんなのはどうだろう」


 俺はくうに手をかざすと、カクヨムのエピソードの最後と、コメントを書く欄が現れた。


「何これ、普通と変わらないじゃない」

「いや、ここが大事なんだ。名付けて『読者参加型小説』」

「どくしゃ、さんかがた?」

「そう、例えばエピソードの最後をこんな感じで締めくくるんだ、


『俺の愛しいあの娘は今、俺でないあいつと楽しい時間を過ごしている。行くべきか、行かざるべきか。それとも……』


 そんで、コメントをもらうわけ。『行け!』が多かったら行く内容を書くし、『こんなことしてみたら?』ってコメントもらったら、そうする内容を書く。どう? 面白そうでしょ?」

「まさにかまいたちの夜、サウンドノベルの自由発想版ね」

「そうとも言える。こんなのweb小説じゃないと出来ないだろ?」

「まあ——そうっちゃそうね、やるの? それ」

「まあ、気が向いたらな。何せ自分はやっぱりアマチュアだからな」

「そうよね、そう言えば土曜のプレゼン内容、出来上がってるの?」

「出来上がってるわけないだろう? これ書くのだけで睡眠時間かなり削ってんだから」

「だったら、早くやったほうがいいんじゃない? さすがに後数日もないよ」

「はいはい、それでは行って来ます、GWのその先へ……」


 こうして、俺はGWの不思議な空間から平日という光の輪へ向かって歩き出した。


(了)



 ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!

 皆様の暖かい眼差しは忘れません、今後も宜しくお願い致します!

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【RGW・ЯGW】プロローグ・リンク集・エピローグ 木沢 真流 @k1sh

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