【ЯGW A】リレー小説・逆走のラスト!
木沢 真流
【ЯGW A】G. World
前作:俺はまずい?
はこちらです!
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ウニの殻?
その響きに俺は鳥肌が立った。
「どういうことですか?」
「言葉の通りよ、食べられたウニのカス。あいつらこの前食べられたウニの残骸よ」
だから大丈夫、あんなの見捨ててもバチがあたりゃしないから、そう女性は付け足した。
そこで俺は気がついた。
「あ、あなたもしかして……」
「ん?」
「祖母の友人の方ですか、あの祖母が借りていたものを返して欲しいと言ってた。あの時は喪服姿だったから気づかなかったんですけど」
女性は一瞬はっとしてから、眉間にシワを寄せ、しばらく思慮を巡らせているようだった。それから突然、我に返ったように満面の笑みを
「そうそう、あんたのばあちゃんにあの鍵を貸してたのは私だよ。あれはね、この世とあの世を行き来する鍵なんだ。『神の世界』ってことでGWらしいけどね、英語が得意じゃないあたしには良く分からんよ。私の家系はね、代々この特殊能力を引き継いでるの。そんであんたのばあちゃんにニカラグアで命を助けてもらった時に、あの鍵を内緒で貸してあげてたのよ。でもあんなろくでもない物、持ってない方がいい。今すぐ返してもらおうか」
そう言って女性は俺のポケットを指差した。
するとそこには入れた覚えのないあの鍵が入っていた。
「いつのまに……」
「それは一旦返してもらう。これがあったらまたあんたはこっちの世界に迷い込んでしまうかもしれないからね」
俺はポケットからЯGWと書かれた鍵を手渡した。
その時だった。
家の窓を何か強い力が、ドンドン、と叩く音が聞こえてきた。
「あいつら、もうここを嗅ぎつけたみたいだね。早くしないと、食べられちまうよ」
「え? 俺は悪いこと何もしてないのに……」
「中には物好きもいるってことよ、あいつらは腹が空けばなんでもござれ。早くここから逃げた方がいい」
「あの……」
「何だい、こっちだって時間無いんだよ」
「ここは死後の世界なんですよね? 祖母には会えますか?」
女性の顔が氷りついた。
「なんでまた……」
「だって俺、ありがとうの一つも言えなかったし。もっと沢山してあげたかったことがあったって言いたかったんで」
女性は呆れたように脱力すると、大きな息を一つ吐いた。
「バカだね、あんたは。ばあちゃんならいつでもそばにいるに決まってるでしょ、そんなことちまちま言ってないで、しゃきっとおし、あの人ならそう言うよ、きっと」
「——そうですね、分かりました」
その時、家の窓の一つがぱりーん、と音を立てて割れた。もう限界のようだ。
「はい、あそこにみえる襖、それ開けて出たらもういつもの世界。早く行きな! さもないと腹をすかせた奴が誰かれ構わず食べに来るよ」
「ありがとうございます、元の世界でもちゃんとお礼をします」
そのまま俺は襖を抜けた。
————残された女性と、無駄にでかい古い日本家屋。
そこに女性は立ち尽くしていた。
「いいのか、最後のチャンスだったのに」
どこかから低い声が響いた。
「いいんだよ。せっかく若い時の写真立てまで見せたのに気づかないなんて。あの子らしいわ。それにまたここに来たいなんて気持ちがもし芽生えでもしたら、あの子に良くないだろ。これでいいんだよ」
女性の目蓋は、うっすらと雫で潤んでいた。
***
あの不思議な体験から一週間。
祖母が亡くなったのがGWの始めで助かった。おかげで会社には迷惑をかけずに大体の片付けは終わりそうだ。
でも一つだけ、解決していないことがある。
あの借りたものを返して欲しいと言っていた祖母の友人と結局会えてないことだ。
あの後連絡があり、なんでもあれは間違いだったとか何とか。それなら、あっちの世界で会ったあの人は誰だったんだろう?
そもそも鍵はあの世で返しているし、大して困ることはないのだが。一応お礼くらいは言っておきたかった。
「あぁ、GWも終わりか〜明日から仕事。凹むなぁ」
空の青は果てしない。
ジリジリと照りつける真昼の太陽に、頬をなでる春の風はまだ冷たい。そろそろ半袖でも出そうかな、目前に迫る5月7日を前に俺はそんなことを考えていた。
see you next GW...
【R→ЯGW 0-X】エピローグ 誰かの他愛もない会話
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889408453/episodes/1177354054889487159
【ЯGW A】リレー小説・逆走のラスト! 木沢 真流 @k1sh
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