【ЯGW B】俺はまずい?
@wizard-T
【ЯGW B】俺はまずい?
【ЯGW C】その世界は 仲乃 古奈様
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「おい来たぞ!」
…………一瞬でもそう思った俺がバカだった。その二人は口をガバッと開け、両眼を輝かせて俺のことを睨んだ。
ああ、おしまいだ。何もかもおしまいだ。おばあちゃんに一体何と言ってわびればいいんだろうか。あれもしたかった、これもしたかった、辞世の句とか考えておくべきだったか、自分がエサ以上の何にもなれなかった事を悔やみながら俺は両手を合わせようとした。
「やめろオイ、お前はどんだけハラペコなんだ?こいつはまずいぞ、俺にはわかる」
「ああ、いけねえ、俺とした事がやっちまったよ。悪いな兄ちゃん、ちと驚かしちまったみてえだな」
と思ったら、どうやら見逃してくれるらしい。いったい何が良かったんだろう。何がどうしてまずいってわかったんだろう。
……ってオイ!つまりこれってあの二人は人間を喰うって事じゃねえか!どうしよう、ライオンや虎だけじゃねえんだ、人間を喰うのは!しかも人間と見分けが付かねえと来た!ああどうしよう、結局状況は改善されてないんだ!俺は再び深く絶望し、そして走った。
俺は走った。絶望と共に走った。誰かいないのか、何かないのか。叫ぶことさえせず、ただただ身一つで走った。
不思議なほどに走れた。陸上部にいた訳でもないのに走れた。いったい俺のどこにそんな力があったんだと言わんばかりに走れた。
そんな俺の前に、ひとりの女性が現れた。あるいはさっきのと同じ人種かもしれねえと思いながら彼女が手を振る方へと走り込んだ。
「ええい、ままよ!」
もし彼女があれと同じだったら今度こそおしまいだ、不思議なほど覚悟はできていた。そしてその彼女が手を振る雑居ビルにしか見えない建物へと飛び込んだ俺は、再び目を剥いた。
俺とおばあちゃんの家じゃないか!その人様の家に上がり込んで、いやこの人の家なのか?俺が正座しながらますます混乱する中、その人は俺に若い女性の顔が入った写真立てを見せた。しかしどこかで見たような顔をしたこの女性、一体誰なんだろう?もしかして若い時のおばあちゃん……と思っていると、その人は俺と写真立てを交互に見比べ、納得だと言わんばかりに頭を大きく縦に振った。
「おばあちゃんが言ってた通りね」
「えっ、おばあちゃんの事知ってるんですか!?」
どう見てもアラフォーにしか見えないその女性は、なんでもおばあさんの知り合いだという。確かに顔のむちゃくちゃに広い人だからこういう知り合いがいても驚かねえが、それにしても、おばあちゃんは俺をどう紹介していたんだ?
「あの、もしもし俺のことを」
「まじめで、気が弱くて、それでいていざとなったらやる時はやるって」
ほめられている事にしたい。でもそれより問題なのはさっきのサラリーマンっぽい男たちの話だ。俺がついその事を頭がかすめハッとして飛び退き、その女性にあらあらと笑われると口が動き出した。
「あの、その、ウニって……」
「ウニ?あああれはみんなおいしいって言うのよね」
「ちょっと!」
「あらもう、ウニってのは連続殺人犯や強姦魔、それからDV犯とかブラック上司とかの事なの」
「へ?」
たしかに、それはどこからどう見ても良い人間じゃない。でもそれがウニって言う、高級食材扱いされているのはどういう事なんだろうか。
「輪廻転生って知ってるでしょ?」
「ええはい…………」
「これまでいろいろおいしく頂いて来たんだから、今度はいただかれてもいいじゃないの」
なんとなく、意味が分かった気がした。ウニってのは前世で重たい罪を犯した人間たちのなれの果てなんだ。
という事は俺はまだ罪が軽い、だからまずいと思われているという事なのか?でも俺はさっき一人見捨てた、やっぱり罪があるんじゃないか。ああまずい、やっぱり俺は結局は、いやでもまだわからない、何がどうなっているのか聞かない事には!
「じゃああれは何です、真っ赤に顔を塗りつぶされた人は!」
「あれはウニの殻よ」
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