一話切り対策の功罪
以前に「【問題編】途中放棄したくなる作品」の中で、一話切りについて語りました。1クールアニメの話から始まって、WEB小説でも似たようなことは多いのではないか、と。
WEB小説では掴みが肝心、というのは、ある程度の共通認識でしょうし、そこまでは問題ないと思います。
ならば、WEB小説でも「1クールアニメ」を見習える点はあるはず。例えば、4クールアニメが普通だった昭和とは違い、現在の「1クールアニメ」時代になってからは、第一話で最終話のクライマックスバトルを先に少し描いてしまう、という構成も結構見られるようになったと思うのですが、あれなんて、まさにWEB小説では使えるパターンなのではないでしょうか。
……いや『4クールアニメが普通だった昭和とは違い』というのは、語弊がありますね。少し時系列を前倒しにして、それなりに派手な戦闘シーンを第一話に持ってくる、というのは4クールアニメ時代でも使われる手法でしたから。そのパターンでパッと頭に浮かんだロボットアニメが二つありますが、おそらく探せば他にも出てくることでしょう。
この『それなりに派手な戦闘シーンを第一話に持ってくる』というのは、実際にWEB小説を書いていて、私も時々、意識しています。
一番最近投稿した長編も、書き始めた段階で「あれ? これだと第一話が地味すぎるのでは?」と思って、急遽構成を変更。途中まで書いたものを第二話に回して、時系列的には後になるエピソードの前半部を第一話、その続きを第四話とする形にしてみました。
……と、ここまでは前置きのようなものでして。
6月15日にカクヨムで読んだ、ある長編作品。全37話だったのですが、その第一話が、まさにクライマックスっぽい内容。最後まで読むとわかるのですが、時系列としては34話に相当するエピソードでした。
なるほど、前置きで述べたような一話切り対策だと思えば、WEB小説として、とても理解できる構成です。第一話で読者を引き込むために、こうしたのでしょうね。
そう、理解は出来たのですが……。読み手としての私の個人的な感想は、ごちゃごちゃして読みにくい、というものでした。「とにかく最後まで読もう」と思って読み始めた作品でなければ、第一話で読むのをやめていたかもしれません。
でも、第二話からは普通に面白かったのです。いや、むしろ第二話には落ち着いた面白さがあって、私はそこで引き込まれました。「なぜこちらを第一話にしなかった?」と思うほどでしたが、あくまでも、それは私の感想。一般のWEB読者の感じ方とは違うかもしれません。長編コンテスト受賞歴をキャッチコピーで謳い文句にしている作品でしたから、おそらく一般的には、現状の構成で正解なのでしょう。
もしかしたら、この「第二話の方が面白いのに!」というのも、WEB小説における一般的な「面白い」と私にとっての「面白い」が剥離している、という事例の一つなのかもしれない、と考えてしまいました。
……と、そういう結論で終わってしまうと、それを自分の執筆には活かせないので。
なぜ「ごちゃごちゃして読みにくい」と思ったのか、もう少し考えてみることにしました。
理由は簡単で、純粋に登場キャラが多すぎる、という問題です。以前に「【解答編1】人数制限」で書いたのと似たような話ですね。よくわからないキャラクターがいきなりたくさん出てくると混乱する、という話です。
これだけならば以前に書いた話の繰り返しであり、わざわざ新しく項目を作ることもなかったのですが……。
ここで、冒頭で述べた「1クールアニメ」の「第一話で最終話のクライマックスバトルを先に少し描いてしまう」との比較です。
第一話でクライマックスっぽい場面を先取りした場合。当然、視聴者の知らないキャラクターがたくさん入り乱れることになりますが、アニメならば絵があるので、視覚的にキャラクターの区別はつくわけです。
ところが、同じことを文章でやった場合。キャラクターをそれぞれの固有名詞で表現することになりますが、いきなりたくさんの固有名詞を見せられたら、読者は混乱しやすいのではないでしょうか。
少なくとも、私は混乱しました。「この名前、今、初めて出て来たんだっけ? それとも、何行か前で既に出て来た名前?」という感じで。そこで数行前に戻って読み直すにしろ、わからないまま読み流すにしろ、どちらにしても小さなストレスになりますよね。
というわけで。
「第一話で派手な場面を描くのはいいけれど、小説は文字媒体だから漫画やアニメとは違う、ということだけは意識しておこう」
と思ったのでした。
……結論っぽく書きましたが、具体的な対応策・解決策にはなりませんね。
パッと思いつくのは「いきなり人名をたくさん動かすよりも、視覚的な特徴(例えば『背の高い男』とか『赤い髪の男』とか)で表記した方が少しはわかりやすいのかな?」という程度ですが、これでは答えとして不十分な気もします。
むしろ私の方が教えて欲しいくらいですから、コメントをお待ちしています。
カクヨム作品を読み書きして思うこと ――素人作家の忘備録―― 烏川 ハル @haru_karasugawa
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