伏線再考
少し間隔が空いてしまいましたが。
前回、
> ちなみに、伏線について語り始めると、実は少し前に「伏線回収の素晴らしい、真似したくなる小説」に出会っているので……。それに関しては次回にでも語ることにして、
と予告していたので、それを書こうと思います。
その前に、まずは前置きとして。
別のエッセイでは書きましたが、このエッセイでは記していなかったと思うので……。カクヨムに来る以前、そもそも今から十年以上も昔。まだ二次創作小説を書いていた頃のエピソード。
とある作品の感想欄で、こんなコメントを目にしました。
「読者は半年も昔の伏線なんて忘れている」
WEB小説ですからね。商業小説ほど読者も真剣に読んでいないかもしれませんし、そもそも更新が不定期だったりする場合もあります。
作者は色々と覚えていても、読者は後半を読む頃には前半の詳細を忘れていることも、おおいに起こり得るのでしょう。
もちろん、感想欄のコメントは、一人の読者の意見に過ぎません(この話を以前に別のエッセイで紹介した際も、賛否両論というより、むしろ『否』が多かった気がします)。
その作品の場合、私は物語がかなり進んだ段階で一気読みしており、前半の伏線を忘れていることもないくらいだったので、そのコメントに賛同も否定も出来ませんでした。ただ、初期からリアルタイムで追っている古参読者の中には、そういう人もいるのだろう、と想像しました。
そこで、自分が小説を書く場合も、伏線は「なるべくわかりやすく」というのが私の基本スタンスになりました。
本当は「わかりやすい伏線」と「わかりにくい伏線」の両方を用意して、「わかりやすい伏線」により納得の爽快感を読者に与えつつ、「わかりにくい伏線」の意外性で衝撃を受けてもらうのがベスト。そう思いつつも、そこまで器用なことは出来ないので、どちらか一方に偏るのであれば「わかりやすい伏線」の方にしよう、というのが私の方針でした。
ところが、最近。いや『最近』といっても、実は二ヶ月以上前なのですが……。
一次選考通過・二次選考落選という作品を集めた企画から読んでいた時のことです。個人的に「なぜ二次選考落選なのだろう? これなら二次も通過して良いのでは?」と思ってしまうくらいの作品がありました。
具体的に素晴らしい点はいくつもあったはずですが、自分の小説の書き方と照らし合わせて「ぜひ見習いたい」と思った点が、伏線の扱い方でした。
小さな伏線がたくさん出てくる作品なのですが、クライマックスまで寝かしておくのではなく、こまめに数話先で回収していくスタイルだったのです。
これ、最初の前置きで書いた「読者が伏線を忘れてしまう」に対する、ダイレクトな対処法ですよね。
一見、これは「自分には真似できない、難しいスタイル」と思ってしまいました。
そもそも、私の伏線重視は、おそらく読書の原点が推理小説である影響です。
推理小説には、序盤から色々と手がかりをばらまいておいて、それを一気に解決編で回収する、というフォーマットがありますよね。
でも、これって推理小説に限ったことではなく、冒険ものファンタジーでも使える手法です。それこそ『ファンタジー』である以上、世界設定そのものが我々の現実世界とは違うわけで、終盤のクライマックスで「この世界の真実は……!」みたいな持って行き方も出来る。唐突に「意外な真実……!」とするのではなく「作品の中で書かれてきた、あれやこれやが伏線だった……!」と言える。
そんな小説を読んだり書いたりするのが、私は好きなので……。
「終盤のクライマックスで伏線回収大会をやりたいなら、こまめに数話先で回収してしまうのは無理だなあ」
最初は、そう思ったのでした。
しかし。
よく考えてみたら、推理小説でもミステリー風味のファンタジー小説でも、完全な真相はラストで明かされるとしても、途中で「謎が謎を呼ぶ」みたいな形で「少しは謎が解けた。でも、新たな謎が生まれた」というパターンはありますよね?
あの「少しは謎が解けた」という場面。途中の謎解きでは、当然、それまでの記述を根拠にしているわけですから、それこそ『数話先で回収』される伏線ではないですか!
つまり。
やはり私が書きたいタイプの小説であっても、数話先で回収される伏線は用意できるはずだし、むしろ用意するべきなのですよね。
そうしたことを考えると。
長年「読者は半年も昔の伏線なんて忘れている」に対して思ってきた答えを、改めて考えてみるべきだと感じたのでした。
再考の結果を今回の結論としてまとめたら、こんな感じですかね? 改めて言葉にすると「何を今さら」感もあって、恥ずかしいのですが。
「伏線は『わかりやすい伏線』と『わかりにくい伏線』の二種類を用意するだけでなく、『終盤で回収される伏線』と『数話先で回収される伏線』の二種類を用意するべきだ」
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