エントリーNo.05
どこへ行った。
ただでさえ人が多いGW。家でゆっくりしたいけど、妻と、幼い娘が許してくれない。
仕方なく、近場の河川敷公園へ出掛けることになったが、人も車もすでにいっぱい。
駐車場内で娘はぐずりだし「トイレーッ!」と叫ぶ。
園児に我慢しろといっても、車の中で漏らすだけ。
ここは二手に分かれて、あとで合流することになった。
それから十分後にようやく車をとめて、どこまでも緑が続く河川敷にたどり着いた。
妻のスマホに電話をすると、僕の荷物から軽快な着信音がなる。
あのおっちょこちょいめ!
整備された河川敷は、かなり広い。
このだだっ広い中から、妻と娘をさがすミッションがはじまった。まだ五月だというのに、いきなり夏がきたかのような暑さの中で。
とにかく腹が立つ。
流れる汗をぬぐう気力も失われていく。ぶっ倒れそう。
だから家でゆっくりしたかったのに。見付けたら、絶対に文句をいってやる。
でも、大きな川は涼しげな水音を響かせて、とても心地が良い。
青臭い草の匂いも、湿った土の匂いも、どこか懐かしい。
自然はとても不思議で、ささくれた心を癒やしてくる。
はやく妻と娘に、会いたくなった。
僕は、河川敷の遊歩道から上の土手にあがった。
すると、レンガ調の道が見える。
そこには家族連れでにぎわうテラスが。
自動販売機もある。
ようやく憩いの場を発見したけど、僕の目は、テラスとは反対側の階段で遊ぶ、娘の姿をとらえていた。
妻の白い帽子も、ひときわ輝いて見えると、ふたりの声だけが耳に飛びこんできた。
「じゃんけん、ぽん」
「わぁい、勝ったぁ。パ、イ、ナ、ツ、プ、ル」
和やかに遊んでいる姿に、思わず頰がゆるむ。
この場所が広すぎても、大切な妻と娘がそこにいたら、瞬時にとらえることができるようだ。
薄雲がかかった空の下、さわやかな風と共に、幸せが駆けめぐるのを感じた。
妻がいて、娘がいる。
この幸せは、当たり前ではない。それなのに僕は、不満ばかりぶつけていた。
胸のポケットからスマホを取り出して、カシャッと一枚、記念に撮った。
パノラマで。
やたらと広いこの場所で、ようやく見付けた大切なふたり。
声をかければ、とびっきりの笑顔で娘は走ってくる。
やさしい妻は、申し訳なさそうな目をして謝ってくるだろう。
それに胡座をかいていてはいけない。
いつまでも、愛し、愛される家族でいたいなら。
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