エントリーNo.10
春も半ばを過ぎて日差しは明るく、スミレやパンジーがプランターにこんもり咲いていた。季節によるものか、それとも休日による解放感がゆえか、川沿いの土手に作られた真新しい憩いの場に訪れた人々の装いも、すでに初夏のそれであった。
素焼き風のタイルとウッドデッキを備えた赤壁の建物の、川を望む一面を大きなガラス戸が占めている。そのガラス戸に大きく"elato&Smoothie"とあった。
不慣れなスタッフが張り忘れたのか、おそらくGが抜けている──が、Gがあろうとなかろうと、出てくるものに変わりはないのだ。ウッドデッキのパラソルが作る日影に、ジェラートのカップをつつく子どもの姿も散見された。
別のパラソルでは食事を終えた若い夫婦がおり、どこかへ向かおうと夫が幼い子を抱き上げまさに立ち上がったところだった。一方、別のパラソルには若い娘が二人やってきて、笑顔を浮かべて川の方へと目を向ける。
川へ行こうと思えば、きっちりと整備された幅広の階段で誰でも容易に土手を降りて行くことができた。まだ草の伸びきらない川へ一段一段降りていく幼女と、その後ろには横縞の服でおそろいの、母親とおぼしき女性。母子の違いをあげるならば、母は日焼けを気にするが、子は足元を気にすると言ったところか。
人混みを嫌ってか、一際大きな木の陰に独り座る者がある。
階段を降りきって、川へと走る娘のポニーテールが揺れている。
川向こうに緑は萌え、林の木々は陽光に照り映え、その身を穏やかな
まだ平成であった頃の、穏やかな昼間であった。
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