誠実に、ひたむきに。深く、強く思い続ける。そのことの大切さ。

物静かで控えめ、少し引っ込み思案。けれど、その奥にひたむきで真っ直ぐな心を持つ女子高生、奈々咲めぐり。
彼女が心の中で大切に育むさまざまな思いを、非常に瑞々しく感性豊かな筆致で描き出す、澄み切った水のように深く胸に染み込む物語です。

父を早くに失い、母と慎ましく暮らすめぐり。贅沢は自ら遠ざけ、大好きな読書に没頭する彼女は、やがて自分自身も物語を書くことに興味を持ち、創作の世界へと強く引き込まれていきます。
クラスメイトへの、密かで一途な恋心。めぐりを好ましく思わない女子達からの嫌がらせ。それにより孤立する彼女を暖かく囲む友人たちとの明るいやりとり。心を打ち明けられる親友との温かな会話。——どのシーンにも、高校時代という大人への過渡期の甘酸っぱさや苦さ、そして瑞々しく輝く煌めきがぎっしりと詰まっています。
やがて彼女はペンを取り、初めての自分自身の物語を綴り始め——。

どんなことがあっても、誠実に、ひたむきに。深く、強く思い続けること。恋でも、叶えたい夢でも、大切な人たちとの絆でも。
そういう心が、やがて人を明るい方へと導くのだ——読み終えた後に、そんな強いメッセージがしっかりと心に残ることを感じます。自らの日々についても、何か初心に立ち返ってもう一度考えてみたくなるような……そんな清々しく澄み切った余韻が、いつまでも胸に残ります。

心が洗われるような深い誠実さに満ちた、素晴らしい物語です。

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