にちようび

ユメしばい

今日ぜったい5面のボスクリアしよ

「高志、あなたまだ起きてゲームしてたの?」


「は? 明日休みだって」


 よっしゃやっときた5面のボス。


「そうやって生活のリズム狂わすから2日にいっぺん遅刻するのよ、たまには早く寝なさいよ」


 だまれだまれだまれ今しゃべりかけんな。5面のボス、5面のボスっ、クッッソそんな攻撃ありかッ、クッソ避けれん、クッソ、この面設計したやつマジクソ、


「森田先生にまた言われるじゃない、これはお母さんの責任ですって。聞いてるの高志」


 全方位ホーミングとかマジクソ、あああああああ、クソ、俺らが、ちょっと頑張ったらっ、避けれるようにっ、簡単に作れクッッソオオオオオッ、避けれるかいなこんなん、


「高志!」


 あ。


「いい加減やめなさいって言ってるでしょ!」


 くっっそおおお設計えええええええええええええ!


 コントローラーを放り投げ、


「だから何を!」


 明らかに設定ミス。設計士のやつこの恨み晴らさでおくべきか。


「ゲーム」


 貴様……。


「今やめたし。じゃあこっちも聞くけど、今はしゃべりかけんのやめてって言ったよね俺」


「いつ言ったのよ」


 貴様もリストに入れるぞクソ。


「俺も聞いてないよ!」


 良枝が溜息をつき、


「もういいから早く寝なさいよ」


「今寝ようと思ったところ」


「次遅刻したらゲーム没収するからね、おやすみ」


 くっそおおおおお俺に抵抗するやつ全員ぶっ殺してええええええ!


 ゲーム機をしまい、歯磨きをしに一階に下り、水を飲んでから自室に戻る。

 消灯。長い溜息。ベットにもぐる。


 クソ、こうなったら良枝がビックリするほど早起きしてやる。遅刻なんか一生してやるか。これで小遣い上げんかったらマジで学校なんかやめる。5面のボスクリアできんかったら速攻でスクエミにイタ電かける。ゲーム設計したやつのSNS炎上させる。あーこんな人生絶対俺だけ。なんかいいことないかなぁ。旅行とか行きたいなぁ。行ったことない所に行きたい。ニューヨークとかマジで行ってみたい。イタリアでもいい。宝くじとか当たったらいいのにな。5億円ジャンボ。ビンゴ。ロトでもいい。当たったらなにしようかなぁ。最低1億はほしい。父2億母2億俺1億。オッケー多分大丈夫。多分舞い上がってるからくれる。絶対遅刻せんって言ったら多分くれる。ソフト一気に5本くらい買お……


 翌朝――


「高志、いつまで寝てるのよ! いい加減起きなさい!」


「へ? 今何時?」


「9時すぎ」


「くあーやってもたッ、遅刻……遅刻する……ッ」


 パジャマを脱いで学生ズボンに足を入れかけたところで、


「休みでしょ今日」


「え?」


 足が引っ掛かって床に転んだ。


 母親は溜息をつき、


「ほーらバチが当たった。着替えたらサッサと朝ごはん食べてしまいなさいよ」


 扉を閉めて階段を下りていった。


 力みきった全身の筋肉が弛緩していく。


「よかったああ……」


 なんか、いつもの休みより10倍以上は得した気分。

 台風で学校が休みになった日と同じレベルの嬉しさ。


 めっちゃラッキー……。今日ぜったい5面のボスクリアしよ……。


 そのあと、そのままの体勢で二度寝して、母親にカミナリを落とされたのは、言うまでもない。



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