集中の功罪

 『ザ・カンニング』というフランス映画がある。落ちこぼれのグダグダ予備校生どもが大学入試の為にあらゆる手段を使ってそれに励むという内容だ。
 本作で紹介される技法はカンニングとしては初歩的なものだ。しかし、なにより主人公の鼻血が出んばかりの情熱が素晴らしい。それについては、コリン・ウィルソンが或る殺人鬼について述べた台詞を紹介しよう。
『彼は自分の犯罪を実行するために あらゆる知恵を振り絞ったが、その知恵をまともな方向に使えばずっと楽に金儲けができるという発想にはついに至らずじまいだった』
 主人公は最後の最後でウイルソンが皮肉まじりに指摘した真理に気づいた。もって祝福すべし。

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