小説コンテストに100回落ちるわたしが2番目にこだわる理由っ!

@naka-motoo

小説コンテストに100回落ちるわたしが2番目にこだわる理由っ!

「チューハイ5:5でレモンと塩をぶっこめ! 鶏は全部シオで焼けタレで焼いたら遠島だ!」

「かしこまりましたあっ!」


 神田神保町の極安(激安より安し!)居酒屋でスタッフあんちゃんとの激なコール・アンド・レスポンスをかました後、ジョッキを前に我ら女子トリオは声高らかに唱和した。


Tてい-婦情ふじょう、小説コンテスト100連続落選、ファッキン!」

「ファッキン!」


 ジョッキが砕け散りそうなぐらいの勢いで、ぐわきん! と乾杯した。


「アーンド、ゲラウェイ!」

「ゲラウェイ!」


 それっぽい反逆の英単語を叫んでゴクゴクゴクと飲み干した。


「わたしは2番目だったのさっ!!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 わたしはワナビだ。

 それも底辺と呼ばれる類いの。

 自覚はあるけどこれだけは外せないのさ。


『わたしは次点で落ちたのさ! もう一息だったに決まってるのさ!』


 その思い込みで100回ありとあらゆるWEB投稿小説のコンテストに応募し、昨夜見事その100回目落選の大慰労会をやったわけさ。


 そんなわたしこと『T-婦情』にも人生のフォロワーがいる。

 Aえい子とBびー子だ。


 キモ系女子トリオとして中学の時以来苦楽を共にしてきたこの3人。

 成人した今はわたしがA子とB子の希望なのさ。


「小説家になる!」


 宣言したわたし。


 3人とも社畜として社会人としても零細企業で底辺ギリギリの収入と擦り切れそうなプライドとメイクしてもリカバーできない容姿ルックスに喘ぎながら、『同志が小説家だぞー、へへへっ!』を目標に3人してSNSを手動でbotしたり、本屋の店員さんを買収してわたしの同人小説を平台に並べてみたりという地道な努力をしてきているのだ。


 そんなわたしたちに千載一遇のチャンスが訪れた。


『お題は「2番目」そしてなんと、このコンテストは、1位ではなく次点、つまり「2番目」の作者がグランプリを獲得します』


「ついに来たか!」

「T、やっておやりよ!」

「天下取ろう!」


 まあ天下ではなく次点を狙うわけだが、常にグランプリには届かない『2番目』に甘んじてきたわたしのために企画されたようなコンテストだ。


 きっとサイトの運営さんや母体である出版社の編集さんがわたしの地道な投稿活動を不憫に思ってくださったに違いない。


「さあ、書け! Tよ!」

「もちろんよ! 度肝を抜くような2番目の小説書くわよ!」


 わたしは勤務している超絶零細企業のわたしの直属の係長にして課長にして部長にしてとどのつまり社員わたしだけの会社の社長に対して、晴れ渡った声で宣言したよ。


「社長、明日から1週間、有休いただきます!」

「バカヤロー!」


 一蹴された。

 仕方なく普段通り仕事しながら書き続けた。

 ただ、プロモーションに余念はない。


「今度、『2番目』コンテストに参戦するんで応援ヨロシク!」

「はいはい」


 補聴器をつけた納入先のおばあちゃん社長にもきちんと売り込んだ。


「今度こそグランプリ獲るんで見ててください!」

「それよか単価下げろ、この穀潰しが!」


 ゆく先々の取引先のみなさんからかように温かいお言葉をいただき、創作意欲が否応にも湧いてくる。

 そしてアイディアも。


「プロットはこうさ。『マラソンのペースメーカーとして永遠の2番目ランナーであるイカンガナーはつい勢い余って契約していた世界ランク1位のトップランナーを抜き去って優勝してしまう。イカンガナーは莫大な違約金を契約ランナー側から求められ、借金漬けの堕落した人生を生き始める』」

「T、いいよ! 読む人に希望を与えられるよ!」

「わたしなんかプロットだけで泣けてきたよ」


 A子もB子も感動のコメントをしてくれる。


 わたしは確かな手ごたえを感じたさ。


 ところが書きあがったデータを投稿し終わってから変な反応が見られ始めたのさ。


『駄作』

『意味が分からない』

『誠実さが皆無』

『文章が不愉快』

『容姿が不愉快』

『この間投稿した時のツイートのタグ付けが ’#根テスト’ってご返還されてたのが不愉快』


 キミとて○誤変換→×ご返還 などと致命的だろうがっ!


 とにかく酷評の嵐だ。

 なんの反応もなくスルーされるよりはマシなのかな・・・


「T。いよいよ今日発表だね」

「うん。長い道のりだったよ。101回目のコンテストにしてついにデビューさ!」

「感無量だよ、T」

「A子もB子もありがとう。わたしゃ、やるよ」



 発表は今日で時間は不定。

 投稿サイト上で通知がある。


「遅いね」

「うん。ギリギリまで選考してるんじゃないの?」

「待たされる方が燃えるさ」


 A子の部屋で3人して朝ごはんと昼ご飯の生春巻きヌードルを食べた。


 けれども、まだ発表されない。


「よっぽど難航してるんだね」

「大丈夫。Tが2番目さ」


 23:50


「うーーん」

「該当者なしとか?」

「つまり1位しかいない?」

「うーーーーん」


 24:00

 とうとう日付が変わった。

 と同時に3人のスマホのツイッターのTLに怒涛の如くツイートが流れて来た。


『××WEB小説投稿サイト、突然のコンテスト中止決定』

『コンテスト参加者による逆不正が発覚。』

『複数の人気投稿作家が2番目を狙うために敢えて★の数を少なくするようフォロワーに働きかけていたことが判明。投稿サイトの運営と母体の出版社は自主的にコンテストの中止を決定した』


「なにこれ・・・」

「T・・・」


 B子がフォローしてくれた。


「て、T。発表はされなかったけどきっと2番目だったのよ。次点だったのよ」

「あれ? でもそれって・・・」


 A子が核心を突く。


「2番目の次点なら、結局3番目じゃ・・・」


 は。ははははは。


 バカヤローっ!!

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