フクロウが示す場所

篠宮玲

第1話 秘密の地図

「はぁ…はぁ…急がなきゃ…」

今日は、日曜日。

同級生と3人で公園で遊ぶ約束をしていた。


「ねぇ!見て見て!」

そう言って、公園に飛び込んできたのは、心菜ここな

小学3年生の女の子だ。

「何?何?」

心菜の話に1番に飛び付いたのが、同級生の柚希ゆずき

「柚くん、これ見てよ!」

心菜が1枚の紙を広げると、柚希と2人で覗き込む。

「これは…?」

「宝の地図だよ!」

「えっ?」

その地図には、ある一点にフクロウの絵が描かれていた。

「昨日の夜、ジィちゃんの部屋で見付けたの!」

その時、

「おはよう!」

挨拶をしながら、もう1人の男の子が近づいてきた。

「おはよう!みーくん」

「はよー」

みー君と呼ばれた彼の名前は、湊音みなと。彼も、2人の同級生で3人は大の仲良しなのだ。

「ちょっと、湊音もこれを見てみろよ!」

「なんだよ」

「心菜が宝の地図だって言うんだけど…」

「うん!ジィちゃんの部屋で見付けたの。」

湊音も一緒に覗き込む

「あ~、このフクロウの場所に何かがあるって事?」

「何か!じゃなくて、宝だよ!」

「ん~、なんか怪しいけど…」

そう言ったのは、1番最後に来た湊音。

「じゃあ、これから行って確かめようぜ。」

柚希が湊音の意見も聞かずに、そう叫んだ。

「さっすがー!柚くん、そう来なくちゃ!」

心菜も乗り気で答えた。

「仕方ないな…行ってみるか!」

「やった!みーくんがいれば、心強いね!」

湊音は、学年の中でもトップを争う成績で、頭が良いのだ。


「この地図が示す場所はどこ?」

湊音が心菜に問いかける。

「ん~この地図の場所からすると、多分…私の家の裏にある山だと思う」

「あ~確かに!この木の位置とか、そうかもしれないな」

横で地図を見ていた柚希が言った。

「場所が分かっているなら、早く行こうぜ!」

「なんだかんだ言って、みーくんも張り切ってるじゃないの」

心菜が小声で呟いた。

「何か言った?」

湊音が振り返って問いかける。

「ううん。言ってないよ。急ごう!」

心菜がそういうと、柚希と湊音が走り出した。

「山まで、競走しようぜ」

「おう!」

あっという間に2人が遠ざかっていく。

「ちょっと、待って~」

その後ろを心菜が追って行った。


心菜が追いつくと、2人は既に山への道へ入って行く所だった。

「ちょっと、地図を見なくて大丈夫なの?」

心菜が問いかけると

「あぁ、大体の場所は検討がついている」

「みーくん、ホントに?」

「流石、湊音だな!」

心菜の問いかけを遮るように、柚希が言った。

「大丈夫だから、オレに着いてこいよ!」

湊音が自信満々に言った。

「うん!もちろんだよ。」

すかさず心菜が答える。

「流石、頼れるリーダーだな。」

柚希も湊音を茶化すように言う。

「じゃあ、行くぞ!」

そんな柚希を無視するように、湊音が先頭に立って歩き出す。

「どんな物があるんだろうね?」

湊音の後ろを歩きながら、心菜が柚希に問いかける。

「さぁな?とにかく、楽しみだな!」

心菜の問いかけに、柚希がそう答えた。


3人でしばらく山の中を歩いていくと、開けた場所に出た。

「多分、この辺りだと思うんだけど…」

自信満々だった、湊音が少し不安げに言った。

「あれ?誰かいるぞ」

そう言ったのは、柚希だった。

確かに、前方に佇む人がいた。

「あっ…おじいちゃん?」

その人物に近付いて行くと、心菜が言った。

「おお、心菜か。どうしてこの場所にいるんだ?」

佇んでいた人は、心菜のおじいちゃんで、孫の突然の登場にとても驚いている。

「おじいちゃん、ごめんなさい。実は、昨日の夜、おじいちゃんの部屋で地図を見つけたの」

おじいちゃんは、納得した様子で、心菜に話しかけた。

「心菜だったのか。昨夜、机に置いておたいた地図が無くなっていてな、、どこに置き忘れたのかと思っていたんだよ」

「私、宝の地図かと思って…。このフクロウはが示す場所は何?」

怒られると思っていた心菜が、おじいちゃんに問いかけた。

その場所には、1本の木があった。

「ん~宝と言えば、宝だな。もう数十年前の話になるが、1羽のフクロウがこの木に舞い降りてきたんだ。そのフクロウを見た1組のカップルが結婚が即決まってな。それ以降、この木に来る、そのフクロウを見た者は幸せになれるという噂が広がってな…」

おじいちゃんが懐かしむように、昔の話をした。

「そうだったんですね」

湊音も熱心に話を聞いていた。

「しかし、一目見ようと、大勢の人が押し寄せた。それに、フクロウも驚いたのか、姿を見せなくなってしまったんだ。」

おじいちゃんが少し寂しそうに言った。

「えっ?そんな事が…」

心菜もその話にビックリしているようだった。

「そう、だから住民で話し合い地図にだけこの場所を残し、山への立ち入りを禁止にすることにした」

「それが、この地図のフクロウだったんですね」

それまで黙っていた柚希もその話に納得しているようだった。

「その通り」

一通り話した、おじいちゃんは、3人を見た。

「でも、なんでおじいちゃんはこの場所に?」

それまで疑問に思っていた事を、心菜が問いかけた。

「部屋を片付けていたら、偶然その地図をみつけてな。久しぶりに来てみたんだよ。地図は無かったけど、場所は昔と何一つ変わっとらんからな」

おじいちゃんがその木を見つめながら、話した。

「そうだったんだ…そんな大事なものを持ってきて、ごめんなさい」

心菜が泣きそうになりながら、おじいちゃんに謝った。

「分かったから、もう良いよ。また、現れてくれたら、良かったんだが…。」

おじいちゃんが心菜の頭を撫でながら、空を見上げた。

「きっと、現れますよ。」

そう言って、湊音も空を見上げた。

「うん…きっと、現れる」

「そうですよ」

心菜と柚希も一緒に空を見上げた。


その時、「ホーッ」と1羽のフクロウが空を飛んで行ったのだった。

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フクロウが示す場所 篠宮玲 @sora-rei

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