ホーホー・ホロウ

濃くも滲むような灰色の景色を抜けると、逢いたいと願っていた神々しいあの方に逢えました。
深い森の中一筋スポットライトのように「虚空さま」へ当たる光が、陰影がハッキリしていて本当に神々しかったです。
空へ向けてお言葉を託すのも、とても素敵な光景でした。

未来SFの短編です。
短編の中でもかなり短い作品だと思いますが、無駄のない洗練された文からは、その裏でしっかりと作り込まれていたのであろう退廃的な世界観が、しっかりと伝わってきます。

そして、この作品はそれだけではありません。
荒みきっている世界で、それでも動植物は安らぎを与える存在であり、それでも人の心は温かくて素晴らしい――ということがよくわかる作品でもあります。読んでいてぐっと響いてくるものがありました。

作品の最後に出てくる、託された「わずかな文字数に集約した短いメッセージ」。それはこの作品そのものでもあると思います。必ず読者の皆さんの心にも届いてくることでしょう。

精緻な言葉運びで描かれた、ポストアポカリプス・ファンタジー。

分断された世界、セメントダストの降る街。
宇宙の瞳をもつフクロウ。

届くかどうかわからないから、想いを託し祈るのでしょう。
素敵な掌編です、ぜひご一読ください。