この小説はですねぇ……あまり詳しくは書けないですね。ネタバレ的な意味で。とにかく第一章で私はやられました。そっちか、と。
情景描写や登場人物の感情の機微などはとても高いレベルでまとまっています。だからこそ、読んでいてストレスがない。スラスラと読み進めることができました。
発想もお見事ですね。女性の身体を鞘とする。
「男は刀、女は鞘」「元さやに戻る」などといった言葉がある様に、女性が鞘に例えられることはよくあります。ですが、比喩表現ではなく女性を鞘にしてしまうというのは、思いつきもしませんでした。その発想力に脱帽です。
思わずくすりと笑ってしまうような場面があったり、時代劇のように悪人成敗ですっきりするような場面もあったりで、とても楽しめる作品です。
ある意味で王道とも思えるこの作品、皆様も一読してみてはいかがでしょうか?
この物語の面白さは、まず何より「わかりやすい」ことだと思う。
文章もだけれど、「物語が難解でない」という点で。
この話には、難しいことは、おそらく何処にも置かれていない。
なのに、読む側に考えることをやめさせない、やめたくないと思わせる文体と展開。
それぞれのエピソードに丁寧にまかれた謎の種の育つ様はとても骨太で、物語を色とりどりなパズルのような知的な構造に仕上げており、その妙味は全く失われない。
簡単に言えば、「なんておもしろいおはなし!」という言葉に尽きる。
などという面倒な御託はさておいて。
女性が剣になる?
大好きですね?
「おもいのつよさ」「遣い手と剣の繋がり」、そんな「互い」の心の在り方こそが真の強さになる?
最高じゃないですか?
それぞれのエピソードの感触は、どれもふわりと風のように軽くて、まるで主人公のありようそのもの。
けれどその軽さが、物語を通して貫かれる「確固たる重み」あればこその軽さであることを、読み進めるうちに自然に感じ取れる。
好みです。大変好みです。
これを書いた現在、彼等の夢をかなえる旅はまだ終わりの気配はなさそうです。
が、それはつまり、彼等の披露する「美し芸」を、特上の席で見る楽しみも、まだまだあるということでしょう。
どの時代にも象徴的なヒーローがいましたが
この物語には、ヒーローの歴史を編み込んだような特徴的な主人公が存在します。
それが主人公のファンです。
明るく朗らかで、のほほんとした雰囲気の彼ですが、能天気な素振りの裏には、知性と真っ直ぐな使命感を持っています。
権力と暴力を身にまとう悪い大人に、ファンが知恵と勇気で立ち向かい、見事勝利する姿はとても爽快です!
そんなファンの相棒は、姉と慕う年上の少女エル。二人の間には信頼という絆がしっかり結ばれ、ギャグやエロに走ることなく、洗練された感情で思い合う姿が綴られています。
主人公たちは一貫して「権力と暴力による制圧」を「知恵と勇気と愛情」によって鎮火させていきます。ですが普通にやると内容が薄くなってしまいます。この物語がそうならないのは、作者様による構成のうまさが根底にあるからです。あっと驚く仕掛けや展開に唸ることでしょう。