エピローグ
170
数日後、校内新聞に【善と悪。学園に蔓延る地縛霊と悪のヴァンパイアを倒した、美術室の美男子幽霊!】と大きな見出しが躍った。
『けしからんな。何だよこの記事。俺のことが全然書いてねぇじゃん。新種のヴァンパイアを倒したのは俺だぜ』
ハカセは不満を口にし、新聞を吹き飛ばす。
『仕方ないよ。本橋の存在も平沼養護教諭の存在も、地縛霊が化けた転校生の存在も、洗脳されていたみんなの記憶から、消えてしまったんだから』
『チェッ。つまんねーの』
俺は吹き飛んだ新聞を掴む。
『ハカセよく見ろ。南仏中学校、学校の怪談ベストスリー『第二位、化学室のヴァンパイア』と書いてあるよ。一位は俺だが……、三位は……』
ハカセが新聞を覗き込む。
『保健室の女幽霊? 誰だよこれ? お前逢ったことある?』
『さぁ……? 知らないな。新参者か?』
俺達は顔を見合せた。
――深夜、ハカセは保健室の女幽霊の存在を確かめるために、保健室に忍び込んだ。
簡易ベッドに潜り横たわっていると、不意に誰かが馬乗りになった。
『お前は何者だ!』
ハカセをヴァンパイアと知らず、首に噛みつこうとした女子。
同族にしては、あまりにも無知だ。
『お前は何処からタイムスリップしてきた? 中世のヨーロッパか? 顔を見せろ』
女子はぶるぶると首を振る。
人間の生き血など、一度も口にしたことはなく、空腹で声も出ない。
『腹が減っているなら、俺が生き血に代わるドリンクを分けてやるよ。イチゴ味だけどな。
だが、その前に名を名乗れ。その制服は……。南仏中学校だよな。お前はこの学園の生徒だったのか?』
『……カミカワ……ナツキ』
【学校の怪談、第三位。
―保健室の女幽霊―
保健室の簡易ベッド。
そこで休んでいると、学校で不慮の死を遂げた女子生徒の幽霊が現れ、生き血を欲しがる。
だが、女子生徒は不器用で、人間に噛み付くことが出来ない。
女幽霊は、太陽を恐れぬ新種のヴァンパイアに吸血されたが、ヴァンパイアになりきれず、幽霊の姿でこの世をさ迷っている。
女幽霊の名は……
カミカワナツキ】
新たな学校の怪談。
◇◇◇
―同年・冬―
美術室の壁に新たな人物画が加わる。
彫りの深い顔立ち。
透き通るような肌。
夕陽に染まるオレンジ色の髪。
その背中には天使のような白い翼。
―秋の絵画コンクール・特別賞―
【美術室の美男子幽霊】風見流音。
『ていうか、美化し過ぎじゃね?』
『ハカセ、何か文句があるのか?』
『やっぱアレだな。大賞獲るには俺様がモデルじゃないとムリだな』
廊下をドタバタと走る靴音がした。
勢いよく開いた美術室のドア。
最強で可愛い十人目の少女の登場に、俺達は顔を見合わせて笑った。
―THE END―
美術室の美男子幽霊と十人目の少女 ayane @secret-A1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます