ジュナside
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『ジュナ、本当にこれで良かったのか。流音の魂を人物画に封じ込めれば、お前の望みは叶ったのに』
『俺が現世に甦ったところで、家族の元に帰れるわけでもない。年月が経過し、両親も歳を取った。俺はもう死んだも同然、家族からも忘れられた存在なんだよ。今さら両親に逢ったところで、誰も俺の話なんか信じない』
『……ジュナ』
『俺はずっとここにいる。ここには十人の親友がいるからな』
『十人? 美少女は全部で九人だぜ』
『あと一人は、お前だよ。ハカセ、お前もタイムスリップしこの学校に辿り着き、自分の国にはもう戻れないのだろう』
『タイムスリップの仕方なら、今研究中だよ。いずれ俺は我が城に戻る。国王の姫と結婚し、俺はヴァンパイアの王国を築く。俺は伯爵から王子となる身分だからな』
『そうか、お前が王子か。クックッ』
絵画の美少女達も、俺につられクスクスと笑った。
『お前達はヴァンパイアの歴史を知らないのか? 無知だな』
『そんな歴史知らないわ。私達は天に召されたくないの。ジュナ様のいない天国なんて、地獄も同然。永遠にジュナ様の傍にいたいから成仏なんてしない。十人目なんて不要よ』
晶子は俺に投げキスをする。
『この五十年、呪いを解くことだけを考えてきた。自分のことしか考えず、君達の未来を奪った』
『ジュナ様、ご自分を責めないで。私達がジュナ様を黙視出来たのは、あの子みたいに私達に霊感があったからではないのよ。私達の寿命が尽きただけ。いずれこの世を去る運命だったから、死に際にジュナ様が見えた。
私達はあなたに殺されたわけではないの。息を引き取る寸前に、天使のようにあなたが現れ、あなたに身を捧げることが出来た。そして永遠の美と新たな命をもらった。ジュナ様には感謝しているわ』
『俺に……感謝?』
胸に込み上げる感情……。
彼女達の優しさと気遣いに、目頭が熱くなる。
『どうやら九人は、死に直面していたからこそ、お前が見えたようだな。ジュナが死神ではなく天使とはな……。流音はお前に逢って霊能力が開花した。いや、この南仏高校の地縛霊がお前の呪いを解く救世主となる流音の命を、狙っていたのかもしれない。流音は地縛霊に殺される運命だったとしたら、俺達が見えても不思議はない。どちらにしろお前らは運命共同体だ』
ハカセの話しが嘘か誠かは、俺にはわからない。
『俺達はみな同志だ。この学園を流音を地縛霊から守る! 学園を二度と地縛霊に支配させない!』
ハカセがマントを翻す。
室内に穏やかな風が吹いた。
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