2.みじかい期間で書くことがまず重要なんだぜ

 おれ、既読。

 前回はとりあえず初回だから、なんでおれが20日で10万字書こうと思ったのか、正直なところを書いた。


 一方で、今回わかったこととして、やっぱり「短い期間で書く」ってのがとっても重要だってことも伝えたいとおもう。

 その理由は3つだ。


・次話投稿までに期間があくと読者が居着かない

・時間かけただけ書ける作品の本数が減る

・ネタが時流に合わなくなる

・作者が飽きる


 なぜ4つあるかというと、「その理由は3つだ」と書いた時点ではまだ何も考えていなかったからだ。

 これも早く書くぎじゅつで、じっさいに作品にするときはあとから「4つだ」に書き換えてほしい。


 それはともかく、上の4つは重要度順だ。以下でそれぞれ詳しく解説する。


 ちなみに、「早く書いたほうがいいのはわかってる、おれが知りたいのはその方法で、説教くさいのはごめんだぜ」ってやつは、ここから下を読み飛ばしてしまってかまわない。


 この章の目的は、「なんで短期間で書かなきゃいけないの?」という理由を明確にして、それを早く書くためのモチベーションにすることだからだ。


■読者はおまえの作品を忘れてしまうぞ

 Web小説は日々大量に更新されるし、あるていど品質の保証された商業作品だって、ラノベだけでも月に100冊以上出版されている。

 その中で、いつまでも進まない作品は、読み続ける対象から外されてしまう。


 もちろんベルセルクとかハンター×ハンターみたいな超名作は、いつまでも読者が次を待ってくれるけど、そこまでの名作と認知されるには時間も知名度も必要だ。

 しがないアマチュアWeb小説家のおれは、ばしばし最新話をアップして、読者をつなぎ留めなくちゃならない。


 具体的に言えば、これは「離脱率」に影響する。

 ここで言う離脱率とは、次の話に進まず、そこで作品を離れてしまう割合だ。

 Webぎょーかいではもうちょっと定義が違うんだけど、あまり細かい話をここでしても仕方がないので割愛する。


 単純に考えて、次の話がアップされていなければ、そこで読者はいったん100%離脱する。

 別の日に次話をアップして、また読んでもらうためには、「再訪」してもらうことが必要だ。

 この「再訪」は、一度に続きを読んでもらうよりもはるかにハードルが高い。


 カクヨムはえらいから、読者に「再訪」をうながすしくみをもってる。


 「フォロー」機能がそれだ。

 フォローしている小説の最新話がアップされると、読者のマイページに通知が行く。おれもこれを使ってほかの人の小説を読んでいる。


 さいきんではトップページに「最近読んだ作品」が表示されて、さらに再訪を促すようになっている。

 最初はカクヨムのトップってクソだなあと思っていたけれど、日が経つうちにだんだんと機能がちゃんと整備されているのだ。えらい。


 それでも、更新が遅いと次話がアップされる前に「最近読んだ作品」から外れてしまうし、せっかくフォローしてもらって通知が行っても読者が「これなんだっけ?」となってしまえば、続きを読んでくれる可能性は低くなる。


 なにより、読者はおれが次の話を書いている間にも、他人の作品を読んでる。

 おれの作品の記憶は時が経てば経つほど薄れていく。


 だから、「期間をあけずに更新する」ということが重要なのだ。


■おまえの作品はそれ1本だけなのか?

 おれのまわりにも、年単位でめちゃくちゃ長い時間をかけてひとつの作品を書き続けている人がいる。


 かくいうおれも、前作『こちら魔物の国中央銀行総裁室でございます』には、かなりの時間をかけてしまった。

 アマチュアの小説は締め切りや文字数の制限がないから、どうしてもひとつの作品に膨大な時間をかけてしまいがちなのだ。


 でも、とうぜんながら、ひとつの作品にかける時間が長くなればなるほど、完成させることのできる作品数は少なくなる。


 一本の作品の完成度を高めていくのも大切だけれど、小説が人に読まれるようになる理由はクオリティだけじゃない。

 たまたま同じ時期に似た作品がなかったり、あるいはブームになってたりで読まれることだって多いのだ。いや、むしろそのほうが多いのかもしれない。


 しかも、あんまり読者がついていない作品一本にこだわってズルズル続けていると、新しい読者はなかなか入ってこない。

 何百話もある作品を第一話から読み始めるには、そうとうな覚悟が必要だ。


 それに、おれの作品を読んだ読者が「こいつの作品はおもしろい」と思ってくれれば、別の作品も読んでくれるかもしれない。


 そうすると、作品数が少ないのはチャンスを逃していることになる。

 早く書き、早く仕上げることで、より多くのチャンスをつかむことができるのだ。

 特に、おまえが書籍化を望んでいるなら、チャンスは多いほうがいい。


■それって2年前なら新鮮だったけど……

 さっき、おれは自分の前作が完結まで2年かかったはなしをした。

 これは致命的な失敗だった。


 そもそも前作は、異世界に転生した主人公が魔物の国に中央銀行をつくる話だったのだけれど、これは現実の世界で黒田日銀が黒田バズーカとかいって大規模金融緩和をやってた時期に思いついた話だった。


 そもそも書き始めるまでに時間がかかりすぎているのだけれど、書き始めてからさらに2年もかかったから、もう中央銀行への注目度はかなり下がってしまった。


 そうした中で、古くなったネタを引きずりながら完成までもっていくのは、つらく苦しい戦いだった。


 これがまさに、ネタが時流に合わなくなるケースの典型だ。

 なろうなんかだともっと露骨だろうけれど、はやりの「転生して赤ちゃんから異世界生活を始める話」を書いてたら、いつの間にか「おっさん主人公」の時代になってたみたいなこともままあるだろう。


 ひとつの作品に時間をかけすぎるデメリットは、こんなところにもあるのだ。


■おまえ、最新話を書く前に毎回前の話を読み返してないか?

 1週間くらいならともかく、1か月も間があいてしまうと、どう考えても作者だって話を忘れている。


 そうすると、どこまで進んだか、さかのぼって読んでから書くことになる。

 それってすげえ無駄な作業だ。


 それに、時間がかかればかかるほど細部があいまいになって、矛盾点も出てくる。

 矛盾しないように書こうとすると、また読み込みが必要になる。


 最悪なのは読んでるときに矛盾を発見してしまうことだ。

 気に入らないところを直したりして、結局最新話は進まなくなる。


 こういった悪影響はスパイラルを生み、どんどん作品の進みを遅くする。


■つまり早く書けってこと

 ここまでひとつの作品に時間をかけすぎることのデメリットを力説してきた。

 これらの問題をいちどにまとめて解決する方法が、「早く書く」ことだ。


 締め切りを設定して、とにかくそこまでに書ききる。

 それですべてではないが、ひじょうに多くの問題が解決される。


 そうして、やろうと思えば10万字規模の作品でも、1か月で完成させることができるのだ。

 次回は、どうやって10万字を20日で書いたかの話をしようと思う。

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