7.第1話と第2話でPV数がはんぶんくらいになるおまえらのために。
おれ、既読。
前回は第1話を読ませるための方法を書いた。今回は、そこから第2話をいかにクリックさせるかという話をする。
第1話を読ませるために必要なのは、人がどんなことに興味を持ち、どんなキーワードに惹かれるかを考えることだ。
これは流行っている作品をたくさんサンプルすることで、ある程度成果が出せる。
しかし、第2話を読ませるには、実力が必要だ。
第1話を読み切らせたうえで、読み手に「続きが読みたい」と思わせなくてはならない。
こればかりはハックすることのできない領域で、今回紹介するテクニックも、根本的な実力の部分をカバーするものではない。
とはいえ、おまえらが書いた作品の中には、全体を見ると魅力的な作品でも、見せ方によって損をしているものも多くあるように思われる。
以下で、そうした残念な損失を防ぐ方法を検討する。
■タイトルと紹介文と第1話はつながっていることを忘れるな
さあこれから長編小説を書こうというとき、おまえらはまず、作品の中心的な魅力とは遠いところから語り出しがちだ。
映画や紙の書籍であれば、そういうはじまり方も悪くない。
じっくりと時間をかけて作品世界に引き込み、没入させる。
それはたしかに、上質な作品体験につながるかもしれない。
だが、おまえらがこれから作品を掲載しようとしている場所は、Webだ。
作品を読むのにお金を払う必要は無く、同じく無料の作品が無数に並んでいる。
しかも、読者のほとんどは「さあこれから本を読もう」なんて気分じゃあない。
通勤電車や、寝る前のちょっと暇な時間、そのわずかな隙間でおまえの作品に接触しようとしている。
いつでもブラウザやアプリを閉じて、すぐソシャゲの周回に移行できる状態だ。
そうした中で、ゆっくりとした立ち上がりはいただけない。
読者は早々に「これはおれの読みたい作品じゃあなかった」と見切りをつけ、その時点で1話切りしてしまう。
第1話で、その作品の魅力をきっちり伝えろ。
それが第2話をクリックさせるために、最も重要な要素だ。
ちなみにおまえらの中にはこれを勘違いしているやつもいる。
第1話からバトルではじめなきゃいけないとか、設定から語り出してはいけないとか考えているやつだ。
形式にとらわれるな。
重要なのは、「何がその作品の魅力か」をきちんと把握することだ。
おれの場合、今回第1話はほとんど主人公の身の上話で、設定を語っているようなものだった。
それでも9割近い読者が、第2話に進んでくれている。
まず、おれは今回の作品の魅力を、「性欲の強い女の子のあけすけな独白」という部分に見出した。
だから、第1話で主人公に「オナニーが趣味であること」「オナニーを始めたころの話」「オナニーのある生活」といった、本来隠されるべき内容を、恥ずかしげもなく語らせることにした。
タイトルで興味をもち、紹介文を読み、第1話をクリックした人にとって、これならば「読みたいと思った作品のイメージ」と「実際読み始めてみたときの印象」が大きくズレないと考えたためだ。
ポイントはここだ。
自分がタイトルと紹介文に何を書いたか思い出せ。
読者は「そこからイメージされる作品」を読みに来ているのだ。
逆に言えば、タイトルや紹介文と第1話の内容にギャップが大きい場合、それは離脱の契機となってしまうのだ。
タイトルと紹介文と第1話は、それぞれつながっていることを忘れるな。
■続きが気になる終わり方を常に心がけろ
作品の魅力をきちんと伝えることに比べると重要度は劣るが、こちらも重要なテクニックだ。
おまえらの中には変に律儀なやつがいて、毎回1話の中でお話がきれいにまとまるように書いている作品を見かける。
ドラえもんみたいに、1話ごとに話が完結しなくてはならない事情のある作品もあるが、少なくともWeb小説はそうではないはずだ。
おまえの小説をいきなり第5話から読み始めるやつはまずいない。
1話を終わらせるポイントをずらせ。
第1話の最後で、第2話の導入が始まっているようにしろ。
第2話で何が起こるのかを読者に予想させ、続きを読みたい気持ちを引き出せ。
これは同時に、作品を早く書くためのテクニックでもある。
一段落したところから次を書き始めるには、エネルギーが要る。
次はどんな展開にしようか、どういう書き出しにしようか、考える余地が大きい。
だからこそ、1話を書ききる前に、次の話の書き出しまで決めてしまうのだ。
次の話で大筋何が起こるのかまで決めたうえで、今書いている話を閉じる。
そうすると、次の話を書き始めるためのエネルギーは最小限で済むのだ。
■シンプルに書け。おまえの頭の中を誰も見ることはできない。
読者が離脱してしまう景気は、作品への期待と第1話の印象がズレてしまったときだけではない。
読んでみて、状況が把握できなくなってしまったとき、読者は読むのをやめる。
考えてもみろ、忙しい時間の合間に読んでいる作品で、第1話から複雑な状況が提示され、読んでるうちにわけがわかんなくなってしまった読者のきもちを。
おまえなら最初に戻ってもう一回読み返してみるか?
おれならしない。
そこで読むのをやめる。
そして忘れてはいけないのが、Web小説を読む読者が置かれている環境はさまざまだということだ。
満員電車に揺られながら読んでいるかもしれないし、トイレの中でうんこをしながら読んでいるかもしれない。
注意は散漫になり、読み飛ばしが多く発生する。
それでも読者が迷子にならないような書き方が必要だ。
特に第1話には。
だからこそ、第1話の状況はシンプルにしろ。
おれは今回、だいたいすべての話の最後に、次回予告をつけた。
次回予告と言いつつ、次回の内容はちょっとだけで、大部分は今回のまとめだ。
これは次話への期待感を高めると同時に、状況を整理し、読者が迷子になるのを防ぐ効果を狙ったものだ。
いろいろ読み飛ばしてしまっても、ここさえ読んでくれれば、次の話に進んでもらってもだいじょうぶなように話を組み立てている。
これが離脱率を下げる工夫になっているのだ。
■30個入りの箱より小分けのパック
1話を短くしろ。
カクヨムの読者はおおよそ6~7割がスマホによる閲覧だ。
一度の訪問で読者が滞在する時間は、短ければ2~3分だと考えていい。
この2~3分の間で、読者が第1話を読み切り、第2話をクリックするか、作品をフォローするかまで進められることが望ましい。
そう考えると、1話に使える文字数はかなり少なくなる。
3,000字でも少し多いくらいだ。
特に読者をしっかり捕まえるまでの序盤は、1話が短いほうがいい。
おまえはお菓子を買うとき、聞いたこともないようなメーカーのお菓子を、いきなり30個入りの箱で買う気になるか?
まずは1個買ってみるほうがはるかに気楽だ。
1話があまりに長いと、途中で読者は下までスクロールしてみてウンザリする。
そして読み切るのをあきらめ、そこで離脱する。
第1話では、「少なくともここまで読めば作品の雰囲気がだいたいわかる」というだけの内容を詰め込みつつ、同時に「2~3分で読み切れる」長さでまとめ、「次の話が気になる」とっかかりをつくる。
ここまでできれば、第1話での離脱率はかなり低く抑えられるはずだ。
第1話での離脱率を最小限に抑えるテクニックは、第2話以降も同じように使っていくことができる。
次回は作品全体を通じた離脱率について考えてみようとおもう。
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