明瞭な道筋と静謐な一人称

「月は綺麗ですか?」という題名自体が、物語の「導」なのでしょう。その題名に照らされて、物語はエンディングに向かって滑らかに進んでいきます。

前編ではゆったりとした丁寧語で語られる一人称が、漱石の言葉や月の伝説と相まって日本的な雰囲気を醸し出しています。後編では医療の話とともに雰囲気がわずかながら現代に傾くのですが、それがゆったりとした語り口とコントラストとなり物語に強弱が加わります。

そして明らかになった設定をもとにもう一度読み直すと、また違った印象を与えてくれる物語です。

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