月は綺麗ですか?

作者 菱河一色

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★★ Very Good!!

「月は綺麗ですか?」という題名自体が、物語の「導」なのでしょう。その題名に照らされて、物語はエンディングに向かって滑らかに進んでいきます。

前編ではゆったりとした丁寧語で語られる一人称が、漱石の言葉や月の伝説と相まって日本的な雰囲気を醸し出しています。後編では医療の話とともに雰囲気がわずかながら現代に傾くのですが、それがゆったりとした語り口とコントラストとなり物語に強弱が加わります。

そして明らかになった設定をもとにもう一度読み直すと、また違った印象を与えてくれる物語です。

Good!

静かな語り口で紡がれた、綺麗な話です。

以下、もしかしたらネタバレに通じるかもしれない気づきを書きます。

主人公の視力については前編の半ばに仄めかしてあるので、読み手にも分かります多分。
人物二人の会話がどちらも同じような口調だったため、後編になってようやく相手が男性であることが判明しました。
それまでも手の大きさには触れられていましたが、主人公が高貴な身分の少女なのかとか、ジャンルの確認をしなければ違う方向の想像を導いてしまう可能性もあります(まあ、気にする方が少数かと思いますが 笑)

読後の謎としては、前編の最後にたどり着いた場所はどこか、ということ。
丁寧に扱ってもらえるというのは、男女間の話なのか別のことなのかということ、医師ではない人が術後の包帯を取っていいのかということでした。この男性が、そもそも医師なのかな?

以上のような細かい気づきはありましたが、全体としては、淡々としていながら熱を孕んだ主人公の感情が丁寧に描かれていて良かったです。

★★ Very Good!!

 夏目漱石の名訳……と語り継がれるエピソードを軸に、触れたら壊れてしまいそうなか細い『光』を少しずつ手探りしていく抒情豊かな作品だった。自分の頭の中で想像したところの月を自力で確かめる瞬間は本人にしか分からない。その一瞬を逃さず掴みとった主人公には惜しみない祝福が寄せられるだろう。