第6話 本当の勝者は誰?

 コンテストは無事に読者選考期間を終了した。千夜と運営達の活躍により、複垢は一斉に潰され、WSと思しきアカウントは自主的に去り、ランキングは七人の作品が圧倒的首位を誇っているが、他は軒並み正常化していた。


「皆さん、ありがとうございます。おかげさまでコンテストは正常化し、無事に編集部選考に入りました」


 下北沢は深々とお辞儀して礼を述べた。


「それは良かった」


「こちらも好きに書けて楽しかったです」


 ミタカと立川は満足げに頷く。


「皆さんの作品は圧倒的な差をつけて首位でした。つきましては大賞及び書籍化を……」


「あ~、それは無理だぜ、おっさん」


 髪の毛を黒く戻した千夜が相変わらずのざっくばらんな口を利く。


「それはどういうことですか」


 下北沢が不思議そうに尋ねると、代表するかのようにミタカが答えた。


「ああ、既に我々のエントリーは取り下げてあります」


「ええ!」


「それだけではなく、全員退会済みです。作品のバックアップは各自残してますがね」


「な……何故?」


「カキコンは小説家を目指す者が発表し、腕を磨く場、言わば登竜門です。我々の場所では無かったのですよ」


「そ、そんな……」


「我々の役目は終わりました。では、これにて失礼します」


「う、ううっ……」


 七人が去るのを見届け、下北沢は泣き崩れた。


「密度が濃い一ヶ月だったなぁ」


「でも、勝てて良かった」


 国分寺と長泉がワイワイ言っているとミタカが穏やかに反論する。


「いや、勝ったのは我々ではない。カキヨミ運営と読者だ」


「運営と読者?」


「ああ、運営と読者だ」


 千夜は立川を見つけ、こそっと耳打ちをした。


「千鶴さん、頑張ってね」


 唐突に話を振られた立川はへどもどしながらも答える。


「え? ああ、デビューした時期からして同期ですものね。私も作家として……」


「違げーよ、あれ」


 千夜があごをくいっと向けたのは他の作家と談笑しているミタカ。不敵にウインクしてそっと囁く。


「好きなんでしょ、頑張ってね」


「なっ……!! 菊名さんっ、私はそんな!」


「千鶴さん、行きますよ」


「はいっ!」


 慌ててミタカを追いかける立川を見て、千夜は満足げに頷いた。


「あーあ、真冬だけど春だねえ。次の新作は異世界ラブコメにすっかな。あ! 流れ星!」


 澄んだ冬の空、鮮やかな流れ星が彼らの上を駆け抜けるのであった。



 ~完~





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七人の作家 達見ゆう @tatsumi-12

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