今夜も君に会いに行こう。

不幸な事情から蔵に閉じ込められている女性。一歩も外に出ることも叶わず、ただ食事と着替えを運んで来る世話役が日に数度来るだけ。しかし、そんな彼女にも楽しみにしていることがあった。それは夜になるとやって来る魍魎の少年との逢瀬で……

この二人の逢瀬。ひたすら可愛くて可愛くて可愛くて……最高です。
やり取りのひとつひとつが互いを大切に思いあっていて、純粋に惹かれ合う彼らの姿にほっこりして心が浄化しますよ。

そんな繊細さと健気さと初々しさが満ちている二人の周りには、何やら不穏な気配も漂い始めていて、物語の行く末にハラハラしています。

舞台は江戸時代、火事の多い場所のようで、それ故に神とも妖とも言える魍魎たちの伝承もあり、他にも妖狐、烏天狗たちが近くの山には住んでいるのです。

妖艶な白妖狐に人見知りの妖狐、人間と変わらない恋バナに花を咲かせる魍魎仲間たち、人間側も多彩で、個性豊かなキャラクターたちが生き生きとしています。

自然の恵みや食のおいしさなど、それらが流暢な筆致で美しく描かれており、展開も安定して面白く、それぞれの思惑が入り乱れながらも読みやすくて、どんどん先が気になって最新話まで一気読みしました。

人間と魍魎、二人の恋の行方はどこへ向かうのか。
和風純愛ファンタジーに目が離せません。