第6話 灼熱と暴風の中へ


「さて、全員揃ったな?」


 トラウゼンの艦長室から徒歩1分、航宙艦の中では小型の部類の艦にあたるため会議室とはいっても10人が限度の会議机と簡素なホログラム装置があるだけの部屋だった。集まったのは船務長リブ・ルジュ、航海長エ・ル・マール、砲雷長ラインムント、機関長ロンロ、補給長シミドア・オリウス、衛生長イイイ・ラルル、副長代理アルジム。そして艦長シン・ルックナーの合計8名。人型ヒューマノイドと呼ばれるのはこの艦ではシンだけであり、他はルジュ、ラインムント爬虫類人ラルル軟体人オリウス、アルジム菌類人ロンロ虫人マール鳥人と多種多様。連邦艦隊ではよくある光景だ。

 なお、連邦艦隊に配属されると後天的な遺伝子操作と外科手術により、画一化された標準大気で生存できるように肉体改造を施される。そのため、異なる星で発生した生命も与圧服などに頼ることなく普段着で生活できた。


「まずは各部の状況報告からだ。まずは船務長、頼む」

「わかりました。えー、まず臨時編成された船務科ですが」


 ここ1時間でまとめられた各部署の概況報告が簡単に行われていく。突然の襲撃といきなりの実践だったが、卒業直前の候補生が大半だったのが幸いし、今まで生存できた。

 しかし、現状の問題点の原因の一つでもあった。トラウゼン乗員が全員士官学校からの脱出者である以上、階級は全員、連邦艦隊少尉”候補生”。とりあえずの措置として年度と依然所属していた軍の階級で、大雑把にまとめ役としての各科長が選出されている形に過ぎず、軍隊としての体をなしているかと問われれば首をかしげざるを得ない。科学技術が発達しFTL文明と呼ばれる国家が多数出現した現在であっても、軍隊という組織から生身の兵隊や下士官が消えることはなかった。

 特に、宇宙艦隊は航宙軍艦ハードが繊細な技術の塊であるため、末端の兵であっても技術者としての見識と判断力が問われており、戦闘中ともなれば中性粒子ビームや反物質魚雷などの物理的な攻撃のほかに、ハッキングなどの電子的な攻撃も苛烈に実施される。

 陸戦であればドロイドの一個分隊が敵に寝返ったところで、重砲なり爆撃なりで耕してしまえば済む場合があるが、戦闘中の軍艦の中で1個分隊が寝返れば、その艦の戦闘能力を大きく削ぎ、場合によっては自沈させられる可能性もある。

 そのため、宇宙艦隊の艦隊乗員は生身の知性体であることを前提として編成され、艦自体もそういった設計になっているのが大半だった。

 今、トラウゼンを襲っている試練の一つが慢性的な兵・下士官不足だった。士官学校という組織上、施される教育は士官、すなわち指揮者としての教育であった。最も、兵や下士官としての教育もある程度は施されるが、本職とは比べるべくもない。軍隊を一つの体とするならば、兵は筋肉、下士官は骨格、指揮官は神経に相当する。筋肉と骨格を奪われ、神経の中からそれなりに向いているものを筋肉と骨格に割り当てて生きている生命体、それがトラウゼンの現状だった。

 考えれば考えるほど滑稽な現状を認識し、軍隊というのは無茶と理不尽が徒党を組んで進撃してくる場所だと、今は亡き教官の言葉が脳裏をよぎる。


「残りの弾薬は分裂弾頭誘導弾が予備弾薬を入れて120発、空間魚雷が16発でちょうど2斉射分。対艦レーザー兵器は最低限の交換部品はありますが、各砲2000発撃てればラッキーでしょう。対宙機銃は、まあ、すべての火器が弾切れになる時までは持ちます。また損害ですが、5番機銃の修理は通常空間で船外活動を行えば一応可能です。あと1回の全力戦闘は可能ですができる限り早期の補給をお願いします。砲雷科からは以上です」


 2足歩行のワニといった風貌のラインムント砲雷長が着席する。

 船務科と砲雷科の報告からトラウゼンの損害状況も何とか把握できた。

 無茶な戦闘のおかげで艦尾の後方捜索レーダーは大破修理不能、これは側面警戒レーダーで拡大捜査を行えば何とかカバーできる。3番エンジン付近に備え付けられた5番機銃の修理のめどはついている、ただでさえ少ない対宙迎撃火器だ、直さない選択肢はない。先ほどの戦闘で安全装置が作動した3番エンジンだが、調査の結果誤作動と判明した、エンジン自体に特に問題は無いらしい。

 そして致命的といえる問題点が2点。一つは艦尾部分に搭載されていた超光速FTL通信機が艦尾レーダーと同じように大破修理不可。自分たちが健在であることを友軍に示すには、亜光速NLS通信機を使用するしかない。星々の距離が光の速度で年単位というスケールである宇宙空間において、NLS通信しか使えないということは友軍の支配星域、つまるところ目と鼻の先までいく必要がある。シンプルに言えば、救援は絶望的。

 そして、2点目。最後になったオリウス補給長が、ふわりと浮かびながらラグビーボール型の胴体から垂れ下がった触手をコンソールに滑らせて立体映像の表示を切り替える。


「さて、最後になりましたが補給長を任されてしまったオリウスです。以後良しなに。単刀直入に言いましょう、このままではトラウゼンはカンダルヴァどころかトリ・アンフでデブリの仲間入りになります」


 表示されたモニターには心もとなさすぎる推進剤の残量が表示され、わかっていたとばかりに数人がうなる。

 もともと、出航する予定になかった艦を無理やりたたき起こして、引きずり出したのだからある意味では自業自得といえる。推進剤は正真正銘の危険物であり、そんなものを常時軍艦に満タンにしておく軍隊などありえなかった。こういった場合スクランブルに備えて予備タンクにいくらかの推進剤は確保されているものの、基本的には近海迎撃用と割り切られているため量は決して多くはない。

 慣性航行という手段をとれないトラウゼンにとって、推進剤の枯渇はそのまま遭難を意味した。今の残量ではどうあがいてもトリ・アンフ星域で枯渇してしまう。


「そ・こ・で、補給科といたしましてはザーメグ星系ないしトリ・アンフ星域で補給を行うことを提案します。候補としましては、ザーメグⅣaかトリ・アンフⅡが適当かと」


 トラウゼンの映像が切り替わり、進行方向の2星系のうち、推進剤として利用できるガスを含んだ巨大ガス惑星が拡大表示されている。

 ザーメグⅣaは典型的な巨大ガス惑星で星系の外側を公転しており、2つの衛星を持つ。一方トリ・アンフⅡは恒星トリ・アンフの極至近距離を公転する灼熱巨大惑星であり、質量はザーメグⅣaよりわずかに大きい程度だった。


「補給か、それならザーメグⅣaでいいんじゃないのか?灼熱巨大惑星なんてできれば近寄りたくないぜ。なぁ?マール」


 頭頂部のごつごつしたオステオダームをなでながらルジュ船務長がボヤき、親友の航海長に同意を求める。彼の視線の先には毒々しくも幻想的な尾をたなびかせるトリ・アンフⅡの画像が映し出されている。

 灼熱巨大惑星はかつて地球ではホット・ジュピターとも呼ばれた星で、その名の通り恒星のすぐ近くを公転しているガス惑星だ。恒星の輻射熱をもろに受け大気は1000度以上にまで熱せられることもあり、潮汐固定によってある面が常に恒星を向いているため、昼の部分から夜の部分へ向けて時速数千㎞、温度数百度の熱風が吹き荒れていた。今の科学技術で作られた艦でも暴風の中での姿勢制御は困難を極め、一歩間違えばバランスを崩して空中分解してしまう。

 訓練と称してシミュレーターや実地演習で灼熱巨大惑星に降下することもあるが、体験した候補生は決まって”2度とやりたくないと”口をそろえる。

 同意を求められた航海長は、3つの目の少し険しくし「そうも言ってられないんだ」と小さくこぼした。


「船務長。私もできるならあんな星に近寄りたくはないが、今回ばかりは行くしかないようだ」

「何?どういうことだ」

「モニターをよく見ろ。ザーメグⅣaとアンダーレーンの位置関係を特にな」


 自分とは対照的に”航海長”としての仮面を外そうともしない3本の視線をたどる。そこに映し出された光景を正しく認識したルジュは、カエルがつぶれたような声を絞り出した。なるほど、鉄面皮なマールが嫌そうな顔をしたのもうなずける。


「ええ、航海長の言う通りです。ザーメグⅣaは極端な楕円軌道を描いており、今は遠日点付近。そして悪いことにこれから私たちがレーンアウトするポイントとトリ・アンフへのエントリーポイントは真逆の方向です。今の推進剤残量では到達できません。一方、トリ・アンフⅡは恒星のすぐ近くを回っていますから距離は誤差レベルで、一番遠い時でも十分到達できます」

「じゃあ、なんだ?ザーメグからはとっとと離脱してトリ・アンフⅡで補給するしかないってことか」

「ええ、その通り。もっとも、すぐに引き返して白旗上げるって手も無きにしも非ずですが」


 ふわふわと風船のように浮遊しながら笑えないジョークを飛ばす補給長に「冗談じゃない」と思い切り顔をしかめる。もっとも、この風船や飛行船のような浮遊知性体も本気で言っているわけではないだろう。


「マール、できるのか?」

「やるしかないだろう。一応はマニュアルもあるし、航宙艦はそういった場合に備えて設計してある。よほど下手な手を打たなければ爆沈はしない…はずだ」


「そこは言い切ってくれよ」親友といっていい鳥人の自信なさげな予防線に椅子からずり落ちそうになる。この男は冗談というものをあまり言わない、だとするならば本気で危険だと考えているということだ。ええい、降伏が妙に魅力的に見えてきた。


「どちらにせよ、選択肢はないということか」


 一つ大きな溜息を吐きだしたシン。場合によっては自分が指示だけでなく、舵輪を握る必要が出てくるかもしれない。シミュレーターでは散々やって、一度も沈んでないが、だからと言っていきなり教官抜きの実戦は憂鬱にもなる。二度とやりたくはなかったと頭の片隅でこっそり弱音を吐き、鬱屈した気分を吐き出すように一つ深呼吸し腹をくくる。



「航海長、トリ・アンフⅡまでの航路を策定しておいてくれ。ザーメグは飛ばしてトリ・アンフで補給を行う。機関長」

「あいよ。できる限り推進剤を節約するようにいろいろ試してみるぜ。ああでも、あまりあてにして派手に吹かすなよ?だましだましでギリギリなんだから」

「わかってるさ。砲雷長、レーンアウト直後にスォーム・ミサイル12発を熱源探知モードで放出しておいてくれ。もちろん時限爆破装置も作動させてな」

「なるほど、機雷変わりですか」

「来ないとは思うが、一応な。ほかには何かないか?」

「あっ、はいはい!議題あります」


 シンの隣で触手が上がった、元をたどると根元にいるのはアルジム。会議は終わりだと会議机から立ち上がろうとした元候補生たちは何事かと菌類へ視線を向ける。


「艦長の副長問題について。いやーやっぱりヒラ通信士よりもちゃんとした役職の方が兼任した方が」

「お前でいいだろ」

「あなたでいいでしょ?」

「アルジムさんよろー」

「俺パス」

「そのままでいいんじゃね?」

「私基本的に医務室にいますし、無理でーす」


 ルジュ船務長、マール航海長、オリウス補給長、ラインムント砲雷長、ロンロ機関長、ラルル衛生長が次々拒否し会議室を後にしていく。あとに残されたのは触手を挙げたまま固まったアルジムと、それをどこか遠い目で眺める艦長だけだった。


「うっそーん」

「まあ、多数決をとれば7対1だ。しばらく任せた、

「やっぱ民主主義ってクソですわぁ…」










 ザーメグ星系を最短距離で突破し、トリ・アンフ星域に突入してから数日。駆逐艦トラウゼンの艦首方向には熱せられた巨大なガスの塊が虚空に浮かんでいた。

 影の部分は青っぽいが、薄く黄色みがかかったG型主系列星トリ・アンフの方を向いた面は真っ赤どころか白くなるまで加熱され、無数の筋が昼の面から夜の面へと惑星表面を走っている。大気上層部から絶え間なく蒸発し続けるガスは、主星から放出される恒星風によって150万㎞もの尾を形作っており巨大な箒星のようにも見えた。

 外から見る分には宇宙の神秘を感じる壮観といってよい光景だが、美しい表面をクローズアップすれば数百度の熱風が数千km/hで吹きすさぶ正しく地獄といってよい光景。これからあの中に潜り込むと考えると、最初にこんな星で推進剤を補給した生命体は自殺志願者だったのだろうかとも思えてしまう。


「公転速度補正、良し。最終進入軌道確認、艦首下げ舵3…取り舵1…右舷後進最微速…後進止め」


 頭の片隅ではそんなことを考えながら、指示を伝達していく。侵入角を誤れば落っこちるどころか惑星大気にはじかれる危険性すらある。また、惑星から噴き出したガスの帯の中を降下していくため、艦体が小刻みに震え、時折軋むような音がかすかに聞こえたりもする。


「右舷傾斜5度、右舷スラスタ3番、8番出力チョイ上げ。艦首スラスタ1番、2番出力0.5絞れ。面舵2」


 トラウゼンはトリ・アンフⅡの昼と夜の境界から、夜の面の側へ少しずれた場所めがけて接近高度を落としていく。黒い艦の周囲を蒸発した大気がまとわりつき白い尾を流星のようにたなびかせる。


「高度2000…1990…1980」

「艦首下方20に乱流あり、回避を推奨」

「艦首方位そのまま、左舷側面スラスタ出力50上げ…………航法、どうだ」

「あと3秒、2…艦首方向に乱流なし、いけます!」

「左舷停止、右舷スラスタ出力50上げ…止めろ」


 航海長が読み上げる数値はすでに相対距離から相対高度に変わっている、艦のメインスラスターだけではなく艦全体に分散配置された姿勢制御用スラスターが断続的に噴射され、艦の姿勢を風上へ艦首を向けるように保ちながら高度を下げていく。矢継ぎ早の指示もあって、今頃機関室では出力の調整にてんてこ舞いだろう。それ以上に、細かな調整を行っている航法コンピューターの冷却装置はうなり声をあげているに違いない。

 高度が下がるごとに風速は下がっていくが、艦にたたきつけられる大気の密度は増大していった。それに比例し、艦の揺れも大きくなっていく。姿勢制御スラスターと慣性制御装置で無理やり押さえつけてはいるが、それでも惑星上での嵐の海を航行する艦のごとく、上下左右無秩序に乱高下するエレベーターの中にいるような、臓腑を突き上げられる不快な感覚は拭い去れない。


「シールド出力異常なし、後方乱流予測範囲内」

『こちら艦底部第4セクション、資源採取ダクト降ろし方準備良し』


 周辺に張った後方が開いた紡錘形のエネルギーシールドで艦体を包み、風よけとして機能させるが一定以上の密度ではシールドを貫通する大気の速度が増大し意味をなさなくなる。そのため、シールド内で推進剤原料を補給する効率が最大かつ、大気の暴風がシールドを貫通し艦体にまともに直撃しない高度に艦をとどまらせる必要があった。


「後方乱流許容値オーバー。艦長、風下に流されています。惑星表面相対速度マイナス130」

「両舷出力上げ、第3戦速。艦内慣性制御出力最大」

「右舷方向から突風!艦首方位急変!指定方位からのズレ8度、増大中!」

「艦首左舷、艦尾右舷出力いっぱい!面舵30!」

「12、18、19、20、21、20、16、13…艦首方位正常値に復帰中」

「舵戻せ。ったく、このじゃじゃ馬惑星が」


 ガタガタと小刻みに振動し、油断すれば風に流されそうになる艦の手綱を何とか握りつつゆっくりと目標高度へ向けて降下を続けていく。一瞬ですら気を抜けない航海にシンの神経は擦り切れ、思わず悪態が口を突いて出ていく。

 唯一の救いは降下直前に頼んで肘置きのホルダーに入っているのは、ホットコーヒーであることぐらいだ。もしアイスコーヒーなら、唯でさえ薄い連邦艦隊のコーヒーは口をつけるころには無粋な泥水と化していただろう。

 すでに周囲は濃厚なガスの大気に包まれ、装甲シャッターの裏にはめ込まれたモニターには画像処理を施された外界の映像が映し出されている。張り詰めた糸の上を歩くような緊張の最中、電探手が困惑した声を上げたのは目標高度まであと3㎞を切ったときだった。


「は?れ、レーダに感あり。前方12㎞に巨大構造物、エネルギーシールド反応もあります。おそらくステーションかと」

「誤作動じゃないのか?」

「精密探査開始……いえ、精密探査でも構造物が確認できます直径3㎞程のリング型ステーションです。あ、IFFに応答あり、不明構造物の国籍はシャングリラ継承国」


 思わず、アルジムと顔を見合わせる。シャングリラ継承国は”連邦”の創設国家であり、発足から現在まで連邦大統領を排出し続けている星間帝国。支配種族はシンと同じヒューマノイド。しかも形質は見分けがつかないほど似ている、というよりもほぼ同一。歴史は古く、かつてはこの銀河のほとんどを手中に収めていた帝国が衰退し、分裂した結果残った国家の一つだ。

 その科学技術、軍事力は連邦の構成国でもトップを独走し、継承国1つで他の連邦加盟国を丸ごと踏みつぶせると噂されている。最も、当の継承国にそんな気は全くないらしく、連邦大統領で連邦の実権を握る以外は積極的に他国とかかわろうとはしない。強大な武力と科学力を持っていたとしても、それを他帝国へ供与することはほぼなかった。

 わざわざ灼熱巨大惑星大気圏内のこの地獄のような環境に、恒久的なステーションを建造できるとするならば連邦内では継承国だけだろう。逆に、このステーションが継承国の国籍を持っているのだとすれば奇妙なこととは思えなくなってくる。

 何をやっているのか、何が目的なのかイマイチはっきりしない不気味な国だが、それだけ何をやってもおかしくないと考えられた。


「艦長、どうします?」


 船務長の言葉に数舜考え込むが、結論はすぐに出た。おそらく目の前にあるのは秘密基地だろうが、向こうの技術ならこちらが見えているだろう。本当に隠したい基地ならばすでに自分たちは攻撃を受け撃沈されている。そうなっていないということは、少なくとも今すぐどうこうする気はないということだ。

 それに、ステーションというのであれば港もあるはず。暴風の中で姿勢制御を行いながら補給をするより、入港した後でゆっくり補給した方が望ましいのは考えるまでもない。


「機関室、出力上げろ。前進しシャングリラ継承国のステーションへ入港を試みる」

「危険では?」

「警告を食らったらおとなしく戻るさ。アルジム、通信を送ってくれ。”こちら連邦艦隊所属、駆逐艦トラウゼン。我に交戦の意思なし、推進剤補給のため入港、もしくはシールド内での投錨を求む”とな。応答があるまで繰り返せ」

「了解、返事の代わりにミサイルが飛んでこないことを神にでも祈りますか」

「物質主義者が何を言うか」

「物質主義者でも、体よく責任を押し付けられる存在がカミサマですからね」

「”協約”の連中が聞いたら助走つけたうえで反物質魚雷で殴られるな」


 トラウゼンのスラスターの光が強くなり、暴風の中で高度を維持してた艦体がゆっくりと前進を始める。熱風吹きすさぶ艦首の先には、暗い色で塗装されたステーションが浮かんでいた。







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