市井観-街の風景-
何かがおかしい。
私がそう思うようになったのは、夜コンビニに出かけたときにコンビニの位置にわずかな違和感を覚えたときからだ。
「このコンビニ、反対車線になかったか?」
始めは小さな違和感だったが、それにハッキリ気が付いたのはあの時。
街で一番大きなタワーマンションが、いつの間にか消えていた時だ。
この街が少しずつ作り替えられていることには、誰も気が付いてはいない。
しかし私は知っている。
あの公園がもっと向こうにあったことも、この道路がもっと狭かったことも。
少しずつしか変化していないとはいえ、建物自体は一瞬で消えてしまう。
タワーマンションも工事など一切していないのに忽然と姿を消してしまった。
後には、ただ空き地が残るばかり。
他にもたくさんの家、ビル、店なんかが気付かないうちに消えていた。
それらは空き地になったり、まったく別の建物になったりしている。
そんなことが、二週間に一回、多い時には三日で一回くらいの頻度で起こっていた。
そこに住んでいた人たちや、働いていた人たちがどうなったのかは知らない。
知る術もない。
ただ、気が付けばこの前までそこにあった建物が消えている。
明らかに人間業ではない。
こんなスピードで街が上書きされていれば、誰か一人くらいは気が付いてもよさそうなのに。
いや、その一人が私か。
もしかしたら自分の他にもこの変化に気が付いている人がいるのかもしれないが、少なくとも私は会ったことが無い。
そもそもいたとして、私にはこんな変な現象が見えていますと大々的に言って歩くわけが無いのだ。
頭がおかしいんだと思われる。
だから私もそんなことはしない。
街は今日も誰にも気づかれずに作り替えられる。
それらは誰にも気づかれないし、ニュースになることも無い。
しかし確実に存在している現象なのだ。
この街が全く違う街に変わってしまうのも、時間の問題かもしれない。
最近では、私もどこが作り替えられていて、どこが元からそうだったのかわからなくなってきた。
もしかしたら私にも、記憶改ざんの魔の手が迫っているのかもしれない。
それならそれで気が楽だが。
いや、そんなことはどうでもいいのだ。
あまりのことについ考え込んでしまったが、さしあたってはこれからどうするかを考えなければならない。
私の家はどこに消えた?
シセイカン 甘木 銭 @chicken_rabbit
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