第n話 世界、時々夢

 朝、飛び上がるように目が覚める。

 意識の覚醒につられてようやく五感が仕事を始めると、冷たい汗で張り付くシャツの感触と、口内で粘つく塊の唾液の堪え難い苦味を捉える。

 瞼は快活な朝日に灼かれ、早起きな鳥の囀りは耳孔に突き刺さる。

 快であり不快である世界の朝に私の体は容赦なく強襲され、軽い混乱を起こす。

 最も現実らしい現実が、朝の目覚めとなって現れる。


 私は、あぁ、またあの夢か、と思う。



《了》

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ツクリモノ 笛吹 斗 @haruka0612

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