美しさゆえに穢れ、純粋さゆえに堕ちるのか。

 物語は大江山の酒呑童子を退治した後のものだ。酒呑童子を倒す前から、一人の美貌の少年は愁いを帯びていた。そんな少年のことを気にした義兄は、少年の家を訪ねる。しかし、昨晩家を出た切り、少年は帰っていなかった。
 ふと目をそらせば、路地裏に累々と積み重なった人々の死体。蔓延する病に、跋扈する犯罪者たち。そして異界に繋がるという桜。
 そんな中、義兄はふらり羅生門に馬を向ける。そこには少年の姿があった。
 しかし、その少年は——。

 思春期という現代の言葉を、時代伝奇ものとしてここまで描ききる力量に舌を巻いた。そして、悲しい人間の性や、人々の暮らす場所の不穏さが、文章からにじみ出ているようでした。

 是非、御一読下さい!

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