極限の美、めくるめく絵巻物の世界

淡々とした丁寧な美しい文章を読み進めていくうちに、いつのまにか絵巻物の世界に取り込まれていることに気がつきました。一つ一つの文章が脳内で重なり合い、無限に続く十二単に包まれていく感覚を味わいました。

ただの記号に過ぎない文字で、これほどの極限の美と精神性を表現できるものなのでしょうか。これは静かな衝撃で、作者が持つ世界観と、それを表現する手法に戦慄さえ覚えました。

単に美しい絵画なのではありません。映像的な美だけではなく、金時をはじめとする登場人物たちの想いや悩みを見事に表していることで、立体的な世界になっています。そのために否応なく没入感に捉われます。若さゆえの葛藤で心を滅ぼしてしまう儚さが、読み終えた時の昇華に繋がっています。

この芸術的な作品を生み出した作者の才能に拍手を送りたいです。