第500話華音の決意 (完)
黙り込む華音に、久保田紀子が身体を寄せる。
「華音君・・・怒っている?」
華音は首を横に振る。
「そうではないけれど、スッキリしない」
久保田紀子
「ホテルの支配人の土下座・・・かな」
華音は、少し頷く。
「ああいうのは見たくない」
久保田紀子はゆっくりと説明。
「ホテル業界の人にとって三田雄嶺の名前は絶大」
「そのご子息に失礼を働いたとなれば、土下座は当然かな」
華音は苦しそうな顔。
「面白くない、僕の力でも何でもない」
柳生寛が華音を諭す。
「いや雄嶺御大も、若い頃には、先々代の名代として何度も覆面調査」
「同じような経験や思いをなさっています」
「今回も、その・・・」
しかし華音は納得しない。
「二度としたくないな、こういうこと」
「身分とか何とか・・・時代錯誤」
久保田紀子は、華音の背中を撫でる。
「でもね、華音君、特に京都は、それが絶対・・・」
「何をするにも、身分を考えないと」
華音は苦しそうな顔。
「親父に報告したら、すぐに東京に戻る」
「もう少し気持ちの整理をしたい」
柳生寛は困惑した顔。
「相手は、様々ですが、似たような仕事がたくさん控えとります」
「若、お辛いでしょうが・・・こらえてはくれませんか」
華音は目を閉じた。
「三田コンツェルンの次期当主として?」
「どうしても・・・かな」
久保田紀子は、華音の腕をしっかりと抱え込む。
「関西ばかりではないよ」
「相手はホテルだけでもない、観光産業だけでもない」
「食品会社、芸能プロダクション、テレビ局、出版社、自動車、病院、不動産、大手広告代理店、銀行、証券会社」
「三田コンツェルンが関係する全て・・・限りない程にある」
「全てのゴミを処分するの」
華音は、ようやく目を開けた。
「僕なりの方法も使っていいのかな」
柳生寛は、大きく頷く。
「それは構いません、今回は今まで通りの方法で行いましたが」
華音の目に光が戻った。
「やりたい仕事がある」
久保田紀子は興味ぶかそうな顔。
「計画を練る?どこ?」
華音は、はっきりとした言葉。
「柳生の東西も使う、かなりな仕掛けが必要」
柳生寛の顔が厳しくなった。
「さっそく永田町に?」
華音は深く頷いている。
(完)
※秋以降に「三田華音と不思議な仲間たち(仮題)」を始めます。
ご期待ください。
三田華音君の不思議な日常 舞夢 @maimu
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