難しいことは分からない。でも、この作品が美しいことは明確に分かる。

 人間にとって必要なエネルギー生産の問題と、人の主体性について論じた作品。
 次世代の安全なエネルギーとして利用されている、グリーン・オルガネラ。そのシステムを生み出したのは、女性一人と二人の男性の天才三人組。
 物語は天才の一人である主人公が、幻覚に悩まされて通院しているところから始まる。主人公は理解ある職場で、通院しながらもささやかな日々を送っていた。
 しかしある日、突然、安全なはずのグリーン・オルガネラは停電を起こす。そして、グリーン・オルガネラに行きつくまでの過程で、ある爆発事故のために一人の天才が命を落としていることが判明する。そこから問題はエネルギーだけではなく、寄生と共生の問題をも引き起こす。寄生されているならば、主体性は寄生している側にある。では、共生では? はたして、共生と寄生の境目は?
 それを問いかけるのは、かつての仲間の姿をした幻影であり、「意志」の塊。
 果たして、主人公が出した答えとは――?

 専門用語が多く、また、哲学的であるため、この作品は簡単に読めるとは言い難いかもしれない。それは、小生が単に力不足なのかもしれない。ただ、この作品を呼んでいて、「難しい」よりも先に、「美しい」と感じるのだ。ここまで表現力が豊かな作品は、希有だ。読んでいて感動して涙が出るくらい、表現の美しさが際立っているのだ。だから、難解なのは……、と思わずに、とりあえず読んでみてほしい。そうすれば、小説の内容もさることながら、文章表現の美に酔いしれるだろう。構成力もしっかりしているし、専門知識が豊富な作者様の作品である。読んで損なわけがない。

 是非、是非、ご一読ください‼

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