史実と虚構、真の「共演」が見られます。

 史実の人物と事件をベースに、フィクションのキャラクターたちを絡ませる物語というものは、今更、挙げるまでもなく多々あります。しかしフィクションのキャラクターを目立たせるために、史実の人物を踏み台にしてしまっているものが散見されないでしょうか?

 この物語に、そんな乱暴さはありません。

 史実の人物が、実に生き生きと描かれています。恐るべき敵、頼りになる味方、颯爽としたイメージを抱ける、力強さを感じるエピソードなどなど。

 それは真の意味で共演といえるレベルだと思います。

 その中にいる登場人物たちは、フィクションなのか、それとも名を知られていない歴史上の人物なのか、判別が難しい程に溶け込み、生き生きと描かれています。

 虚々実々とは、この物語全体に流れている謀略、陰謀を示す言葉でもありますが、作者と読者の関係にもいえるのではないでしょうか? 誰が架空で、誰が実在しているか。

 現実に存在してもおかしくはない登場人物たちの行動に、目が離せません。