メル・アイヴィー
メル・アイヴィー
メル・アイヴィー
メル・アイヴィー
メル・アイヴィー
この作品を読めば、メル・アイヴィー、と何度も口にしたくなるでしょう。現に、今の私がそうです。
そして、一読目で感動し、二読目では、やっぱり感動するでしょう。現に、今の私がそうです。
物書きがメル・アイヴィー企画を目にしたとき、どこに着目するか。メルの人柄だったり、出生だったり、そこにはみな目がいくでしょう。しかし、あ、そこ目がいく⁉︎ と同じ書き手として脱帽の着眼点、そして圧倒的な作品に対する熱を持って、この作品に魔法をかけたんだと思います。
メル・アイヴィー、メル・アイヴィー、メル・アイヴィー……
めがわるい、うそですね。めがよいあきらさんの新作、みなさまも是非。
一万字以内、という当企画の制限は物書きにとって中々扱い辛いものがあります。
にも拘らず、この作品の筆者はなんと字数制限に加えて、あえて自ら「舞台」をメルの部屋の中のみに、「形式」をメルと博士の問答という形に限定しています。そして、それによって閉じられた世界にしか現れることのない美しさを、きらめきを掬い上げ、作品世界に愛おしさを閉じ込めることに成功しています。
もう、ひたすらに美しいのです。とんでもないのです。
最後に、この企画で忘れてはいけないのが「メル・アイヴィー」というキャラクターが生きているか否か。その点、本作を通じて「メル」のことを"私"はちゃんと「好き」になれたと思います。
ぜひ、一読をお勧めします。
かの文豪は《I love you》の和訳を「愛してる」ではなく「月が綺麗ですね」と読ませたと言います。このようにひとつの言葉に様々な意味を見いだし、多様な表情を持たせて、読者の心に響かせるのが物書きの本領であろうかと、私は考えます。
こちらの短編はまさしく物書きの本領を発揮した《言葉》の物語でございます。《言葉》は人類にだけ授けられた、素晴らしいもの。互いの気持ちを通わせる為の架け橋となり、愛を確かめる誓いともなり、時にすれ違うこともあるけれど、《言葉》があればまた繋がりあうこともできるはず。《言葉》は綴られることで永遠に残り、《歌》となって世界の果てまで羽搏いていく。
メル・アイヴィー
彼女の《歌》は小さな部屋から羽搏き、時さえ越えて、彼女を愛し彼女もまたその魂のかぎりに愛していた「彼」のもとに飛んでいくでしょう。
そうして何度でも、何度でも。
彼女と彼は、愛を《言葉》にするのです。