戦闘型アンドロイドは自らが戦う理由を己の手で獲得できるか?

つくも神、というものがあります。
日本人は古来、物にも魂が宿ると考えてきました。(当然他の国や地域にもありますが、日本は特に擬人化が好きな国であるように思います)
物は意思を持ち、やがて感情を持ちます。
しかしその魂は持ち主に吹き込まれたものです。人の愛が物に魂を吹き込むのです。

本作のヒロイン・黒猫は科学者・平賀博士に作られた『機功』、いわばアンドロイドであり人造人間です。
人工物である彼女にこころはありません。
しかし彼女には学習する機能がありました。
『勉強熱心』な彼女は、平賀博士から、途中出会った斎藤一家から、感情とは、愛とは、そしてこころとは何かを『手探り』で学んでいきます。
最初は「人間とはこうするものだ」という一義的な感覚から始まった学習ですが、やがて彼女は自分が戦う理由について思考するようになります。

こころとは?
かぞくとは?
まもるとは?

人でない、物であるはずの黒猫が、人である読者の私に問い掛けてくるのです。
それを教えてくれるのは、誰なのか、何なのか。
そこには深い、深い、『人間らしさ』があります。

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