第6話 人間としてダメ男

 道場の皆と大会の会場へ行くと、他の道場の人たちと雑談が始まる。

 自分はそこに混ざらない。というか、混ざれない。

 誰も覚えていないからだ。

 全力でバーチャルの殺し合いをした対戦相手なのだから、覚えていてもいいものだが、なかなかうまくいかない。

 根本的に自分にしか興味が無いのだろう。

 これは一人で幸せに生きていく才能ではあるが、誰かと仲良くする為には大きな障害である。

 一生独身でも構わないというか、誰かと幸せに暮らすビジョンが全く湧かないのは不味いと分かっている。


 MMAの試合の後、会場を出たところで呼び止められ、誰かと雑談が始まったことはある。

 今日戦った相手がこんな感じだった気がする。背が高くて、髪が短かく、顔のシルエットがドクロ的だった。

 当然会話は噛み合わないので、違和感を感じた相手は、居心地の悪さを感じて去っていった。


 数時間後に思い出したが、その試合の三ヶ月くらい前に、そこそこ派手に一本勝ちした相手だった。そういえば、対戦相手のコーナーでセコンドをやっていたような気がする。

 そういうとこだぞ。

 と、自省した。



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柔術とある日常 雲出鋼漢 @Aa12146a

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