第5話 獣
「なんで人はなにもすることがないとむなしいんだろう」
「人間だって動物(アニマル)なんだ 喰って寝てるだけでもいいじゃないか」
『ギャグマンガ日和』一巻の、武蔵坊弁慶のセリフである。
最初に読んだのは20年近く前なのに、未だに折に触れて思い出し、自分の心中を言い当てられた気がしてギクリとする。
柔術をサボっている間は特にそうだ。
ただ生きて、何も悪いことはしていないのに、何となく、
「自分は生きていてはいけないんじゃないだろうか?」
「死ぬ方が自然な状態ではなかろうか」
と、生きることへの罪悪感と忌避感が湧いて来る。
そういう時は、やる気が無いのを我慢してとりあえず柔術に行って汗を流すと、テストステロンが分泌されて気分が良くなるし、次の日からは睡眠不足と疲労で余計なことを考える余裕がなくなる。
生きるための知恵。ライフハックだ。
まあ、柔術に行くというのは、日常の全ての苦難をどうでもいい事と切り捨ててしまえることなので、それに対してはどうかと思うことはある。
例えば十年後に過去を振り返って、
「あの時、もっと真剣に悩んでおけばよかったんじゃなかろうか」
とか、そう考えてしまうかもしれない。
というわけで、人生について考える時間が欲しい時は、できるだけ運動をせず、ただウジウジと悩むようにしている。
大多数の男は単純なので、筋肉を動かして良い物を食べ、良く眠れば、多くの悩みは消えてしまうからだ。
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