第5話
成人の行方不明者が全国的に話題に上るのは、一部でしかないのです。
あの女性は私が一度も見たことがない女性でした。
ですからこのあたりの住人ではありません。
前にも述べましたように、ここは正真正銘の田舎であり、住人の数自体が少ないのです。
ですから一年ほどしか住んでいない私でも、1キロ先に住む老人を知っているぐらいですから。
顔も名前も。
その上女が消滅しても何の噂も耳にしないと言うことは、あの女性は近所の誰かの知り合いと言うわけでもないようです。
だったらあの女は何故こんな片田舎を一人で歩いていたというのか。
それについては私も考えて見ましたが、結論から言えばよくわからないと言うことです。
無理やりひねり出した答えが道に迷ったのではないかという推測ですが、その説に私自身が満足しているかと問われれば、満足していないと答えるでしょう。
とにかく若い女性が一人トイレに入ったこと、そしてそのまま消えてしまったこと。
このことは私しか知らないことでしょう。
そして私はそのことを誰にも言っていません。
当然です。
見知らぬ女が児童公園のトイレに入り、そのまま消えてしまった。
そんなことを真顔で言ったならば、たとえ相手が誰であれ私の精神状態を疑うでしょうから。
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