第3話
そしてその女性は現れたかと思うと、足早にトイレの中に入っていったのです。
私の推測によりますと、その女は尿意、もしくは便意をもよおしている時に、偶然公衆トイレを見つけたので、すかさずそこを利用させてもらったのでしょう。
私にはそんなふうに見えました。
渡りに舟というわけです。
私はそのままテレビを見ていたのですが、ふとあることに気がつきました。
それはその女が、トイレから出てこないのです。
先ほども申しましたように、トイレは私が見ているテレビの横に見えます。
入口は一つしかなく、その入り口がなぜか少し道側に向いているために、テレビを見ている私には入り口が見たくなくても見えてしまうのです。
そして言うまでもないことですが、そんなところから成人女性が出てきたとしたら、たとえストーカーのようにしつこく観察し続けなくても、間違いなく気付きます。
しかし女性は一向にトイレから出てきません。
トイレに入ったままなのです。
――……。
そのうちに一時間以上の時が流れました。
さすがにこれは何かあったのではないかと考え、私は部屋を出て公園へと足を向けました。
ひょっとしたら突然発作かなにかを起こして、トイレの中で倒れているのかもしれません。
そう思いながら私は件のトイレの前に立ちました。
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