二律背反ではなく表裏一体の醜美が生きづらさを鮮鋭に咲かせる物語。

アナログを愛すること。
それは過去に想いを咲かせる感覚に似ている気がします。

魔法で珈琲を淹れることのできる世界で、
あえて手動で珈琲を淹れているお店がありました。
その店の名は『珈琲店アナログアンブレラ。』
冒頭の傘が「咲く」場面から、非常に惹き付けられます。

魔法が発達して生活が自由になっても、心が自由になるとは限らず、プロトコルで制御しきれない心もある。
心の傷が魔法のように「無かったこと」にできればラクなのに。
涙は雨のように我が身に降り、あえて雨に打たれ続ける形でしか生きられない。
人生を進むか終えるか迷っている「貴方」に、最適解が提示される日を心待ちにしたい。

行間から溢れる叫びが皮膚を引き裂く勢いで伝わってきました。
一緒に傘を咲かせて、心を裂かせることで見える風景に瞠目します。
連載中の小説です。行方を追いたい小説です。是非、貴方も。

その他のおすすめレビュー

宵澤ひいなさんの他のおすすめレビュー271