珈琲店アナログアンブレラ。

作者 五水井ラグ

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★★★ Excellent!!!

この物語は魔法が人々の生活に深く根付いた時代を基に構成されたファンタジーです。
大企業の社長令嬢で一見恵まれた生活を送る主人公は飛び降りるためのビルを探している途中である喫茶店へとたどり着き、物語が始まります。
文章も綺麗で読みやすく、人と人のつながりや居場所の大切さを教えてくれます。とてもエモーショナルなお話です。是非読んでみてください。

★★★ Excellent!!!

何回も、もう読めない、と思った。
泣きすぎて苦しいし、助けに行ってあげられないし。
でも、ムーウちゃんがそこにいてくれたとして、私に何がしてあげられる?

私は勘違いしていた。
ムーウちゃんが必死に私を助けようとしてくれていた。
大切な読書体験。もしかしたら迷い込んでいた喫茶店。
おいしいコーヒーと覚えたての紅茶を、何杯もありがとう。

★★★ Excellent!!!

便利な魔法がある世界なのにそれを使わずにアナログでいれる珈琲です。圧倒される文章。ゆっくりとした空間。静かで、さわがしい。珈琲のような苦味と深味。そんな印象をこの物語から受けました。
アナログの良さにも気付かせてくれる物語です。
頼れるマスターって格好いいですね!
ゆっくりとこの物語の世界の珈琲飲みに行きたくなりました。

★★★ Excellent!!!

冒頭の一文で引き付けられました。

そんな美しい文章が綴るのは、たくさんの苦悩です。

「アナログアンブレラ」は、その苦悩と言う雨に晒された人達を入れる傘なのでしょう。

傘に入れば濡れることはない、だけど雨がやむ訳でもなくて、いずれはまた雨の中に飛び込まなければなりません。

苦悩は最後まで解決することはなくて、でも、それでいいのでしょう。
苦悩とは解決するものではなく背負っていくものなのでしょう。

個人の苦悩なんてものは誰にも理解出来るはずがない、共有もできません。

でもきっと、その苦悩を背負っている人の手を繋いで一緒に歩いていくことは出来ます。

美しい文章だからこそ苦しみをここまで表現できる、そんなお話でしたね。

★★★ Excellent!!!

生きることも死ぬこともためらっている主人公が、一風変わった珈琲店に行き着いたことをきっかけに少しずつ変わっていく物語です。
こう書くと重苦しい話に聞こえてしまいますが、個性豊かな登場人物との触れ合いが軽快なテンポで綴られているのでサクサク読み進められます。

また、美しいけどどこか危うい作中世界からは、現代社会にも通じるものが垣間見えます。

そんな、「濃いけど飲みやすい」作品です。

★★★ Excellent!!!

まず、表現がとても美しくて圧倒されてしまいます。珈琲店が主の舞台となっているで頑張ってレビューの題目を書いてみましたが…作者様の美しい表現には到底及びません。

でも、私としては「表現の美しさ」は2番目にお伝えしたい事であり、1番は何と言っても「内容の深さ」です。各ストーリーを読む度に、はぁ~っ…と暫く呆然としてしまいました。その位、内容が深いのです。

『生きるという事』…について改めて向き合う、そして考えるきっかけを与えてくれる深い作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

第6回カクヨムWeb小説コンテストキャラクター文芸部門に応募されているこの作品。
読者を魅了して離さない文体と先の読めない詩的なストーリーに目を奪われすぎて忘れがちだが、この作品は「キャラクター文芸」なのである。

そこで、私はあえてひとり好きなキャラクターをここで述べたい。
ゴウという名前の男がいる。まだ主人公のムーウに名前を呼んでもらえない不憫なシルバーアクセサリーさんである。

この世界では身を守るのに必要な魔法を器具として身につけなくてはならず、このゴウというやつはそれを全部骸骨やら十字架やらドラゴンやらのごてごてのシルバーアクセサリーで統一している。

最初の印象はもちろん、外見からしてチャラそうな男である。
しかしムーウと行動を共にすることが多くなってくると、ゴウの印象も変わってくる。
チャラい、というよりは、フレンドリーな、明朗な男。
ムーウの辛さを、彼なりに考えて、解釈して、照れながら、思いやることのできる、いいやつなのである。

ムーウの苦しみに比べたらゴウの優しさなんてちっぽけなものかもしれないけれど、ゴウの優しさが少しでもムーウの救いになっていたらいいな、と思う。

それは、幸せな側にいながら、苦しむ人を心配している私の、ちょっとした救いになるから。

★★★ Excellent!!!

3ー9まで読んで

読者選考にこういった作品を投じる書き手にどんな算段があるのか、是非とも聴いてみたい。とてつもなく不利に思えるから。

小説が書き手の精神世界を表現したものなら生と死を引き換えにこの世に送りだされたような気がする。

冒頭わずか数行で見事に読者を引き込む力、ムーウのストレートに吐き出される内面描写、ない答えを問いつづける絶望にも似た叫びが粉々に砕け散ってる。
この圧倒的な文体はどこから来るのか。
思わず手を握りしめる、これでもかとジリジリと迫り、読者の領域も軽々と試す。
いったい何に手を出してしまったんだという焦燥感。

魔法があたりまえの世界で「あえて魔法を使わない」この一風変わった設定は、魔法を文明に置き換えてるようにも受け取れた。
便利なものには代償を払うようにできてる。

進むにつれ一抹の不安は結末が予測不可能で完結が可能なのかということ。
危ういままにどちらに転んでも恨みっこなしなのか、傷つく毎に透明感を増す世界観に置き去りにされないように完結を確認せずにはいられない。

★★★ Excellent!!!

なるほど祈りたくなってしまう作品だと思った。

私の役割は何だろう。以前五水井さんの別作品に感想を書いて喜んでいただいて、薦めていただいた作品だから、また自分のありったけを尽くしてああいうものを書くべきだろうか。世界観がいいと言葉遣いに魅了されると、この作品の素晴らしいところを連ねて、まだ見ぬ読者に是非この作品を読むよう宣伝する、そんな――。

書きたくない。

なんだか、線を重ねれば重ねるほど目の前のものから遠ざかって行く気がするので。この作品に近からんと打鍵すればするほど決定的に距離を感じそうなので。
だから、通りすがりの一人の読者が何を思ったかということを、とりとめもなく書き連ねるのだけど。

知り過ぎたと思った。私が五水井さんと知り合ったのは先月のことで、やり取りの回数も容易に数えられるし、私が五水井さんについて知っていることは限りなくゼロに等しく、けれどこの小説を単にストーリーとして読むには知り過ぎたと思った。

「あの」現実を、「その」現実を、この人はこうやって小説にするのだと、そう思いながらずっと読んだ。文字の向こうでこの小説を書く人のことをずっと考えていた。何も知りはしないくせに。

この小説が「分かり」ますと、他の人とはできない話をあなたとできますと、言えればよかったのだろうか。そう言いたかったけれども。

”ほんとうの絶望を知らないくせに”
――そうですね。才能は求められましたが、あまり殴られずに育ちました。

きっと私たちはほんとうには分かりあえないし、私のことばは「本質的には届かない」のだ。「それでも」。

祈りたくなってしまう作品だ。ムーウが書く小説の登場人物のことを、ムーウのことを、五水井さんのことを。でも、いつか救われる日が来ることを祈っていますなんて書きたくはない。

救われる日なんて心の底からは信じられないし、進めず終われず迷う日々の中に… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

1話はいっそのこと全部一文で幻想的に表現した方が面白いと思った。

全体的に説明口調でそれが長いのが残念。

独特な世界観で引き込まれる人や多様な解釈ができる文なのはとてもよい。

はまる人はすごくはまる濃厚な小説。

追記:あらためてみたらすごい描写で引き付けられる。

★★★ Excellent!!!

アナログを愛すること。
それは過去に想いを咲かせる感覚に似ている気がします。

魔法で珈琲を淹れることのできる世界で、
あえて手動で珈琲を淹れているお店がありました。
その店の名は『珈琲店アナログアンブレラ。』
冒頭の傘が「咲く」場面から、非常に惹き付けられます。

魔法が発達して生活が自由になっても、心が自由になるとは限らず、プロトコルで制御しきれない心もある。
心の傷が魔法のように「無かったこと」にできればラクなのに。
涙は雨のように我が身に降り、あえて雨に打たれ続ける形でしか生きられない。
人生を進むか終えるか迷っている「貴方」に、最適解が提示される日を心待ちにしたい。

行間から溢れる叫びが皮膚を引き裂く勢いで伝わってきました。
一緒に傘を咲かせて、心を裂かせることで見える風景に瞠目します。
連載中の小説です。行方を追いたい小説です。是非、貴方も。

★★★ Excellent!!!

 本作は関係の意義を仄めかす一方、ある種の贖罪のように思われた。
 環境との関係を喚起しようとする本作の「力」は、テーマでありながら、沈黙を満たす感覚に敏感な描写力として読み手を惹き込む根本的な技術にもなっていてそれだけに、まるで贖罪のようなムーウの内面描写(環境と隔絶したもの)が引き立つ。テーマと筆致が共存共栄している異様な文体である。


 概説の次はテーマその1(と僕が勝手に思っていること)のお話。

 この世界における魔法は洗練されすぎて、そこにあるものとの関係を徹底的に省略する(〈関係〉へと作り替える)方向に止まれなくなり、きっとムーウはその最先端に居る。すべて身体に馴染まない「情報」になってしまって、ドライヤーは〈ドライヤー〉、メイクは〈メイク〉、そうして彼女らの手から離れてしまった。
 ほんとうは〈ほんとう〉に書き換えられて、機能はほんとうだけれどあくまで〈ほんとう〉に過ぎない、関係を損なった〈関係〉になっていく。

 誰よりその中心で、あらゆる関係を〈関係〉としてしか与えられなかった彼女がいまから何を得るのか。自分が死のうというときに他人のトラウマだの後の迷惑だの、結局義務としての〈関係〉に首を絞められて死のうとする彼女。ほんものの傘を追いかけた彼女。


 テーマその2(と僕が……)、今まで語ってきたことと少し離れる、「贖罪」の話。きっとこのレビューの冒頭を読んだ人にとって、この「贖罪」という二文字が浮いているように思われたことだろうからその話。

 彼女のように、〈関係〉すなわち「省略」された関係という歪みでなくとも、「異常」「不器用」な関係を与えられる歪みもある。ほんとうの絶望、ほんものの地獄という言葉を使うには、苦しみは、比べようがなさ過ぎる。
 そこにきて、ムーウがシャノンに対して『ほんとうの絶望を知らないくせに』と思ってしまったこと、しかしヤズ… 続きを読む