アヤカシと現実世界が融合した独特な世界観

妖怪や心霊の類をなんら知識のない人が書くと、できそこないのファンタジーしか出来上がりません。
しかし、この作品は圧倒的な知識に裏付けされた上で世界が作られています。
物語の展開も、冒頭から「謎」を提示する形で幕を開け、読者を引き込まずにはいられない巧みさです。
ただ一点惜しいのが、筆者に力量がありすぎて世界観をしっかり作り込んでいるばかりに、それを第三者の読者に読ませるのが難解なレベルに到達してしまっているところです。
物語の進行とともに世界観の説明がされる構造は見事ですが、少し気を抜くと、せっかくの世界観をきちんと理解せずに読み進めてしまう危険性を孕んでいます。
しかし、読者を引き込むだけの魅力があるので、それも玉の瑕にすぎません。

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