第6話 男の人と、嘘つき。
目を覚ますと、朝だった。
「…………、あれ?」
寝台の上で上半身だけ起こしながら、記憶の
「……どうしたんだっけ?」
確か窓から逃げる気力もなくて、その場に
「自分でベッドに入ったんだっけ?」
呟いて、それは違う、と思う。そして徐々に思い出した。
「……そうだ、ジーラさんだ」
夢かと思っていたが、違う。確か気を失ったところにジーラが現れて、寝台まで運んでくれたのだ。それで、行かないでとお願いして、アニカが寝付くまでずっと夢現にあれこれ話していた気がする。
「夢じゃなかったんだ」
不思議なひとだ、とアニカは思う。彼女はいつも、アニカが挫けそうな時に突然現れる。そしていなくなる頃には、そっとアニカの背を押してくれるのだ。
何を話したかは思い出せないが、きっとうつらうつらしながらも愚痴や泣き言ばかり言っていたのだろう。病人の
しかしお陰で、体も頭も少しすっきりしていた。んー、と大きく伸びをして、寝台から降りる。それから少しして現れたのは、何故かミリアンではなくニコだった。
「あれ、ニコ?」
「おはようございます。ご気分はいかがですか?」
「え? 大丈夫、だけど……」
何故そんなこと聞くのだろうか、という思いでニコの栗色の瞳を見つめる。と、いつもの真顔が一瞬ほっとしたように緩んだように見えた。どうしたの、と声を上げる前にしかし、ニコが一礼した。
「本日のご予定を申し上げます」
いやに突然だなぁ、と悠長に考えられたのは、そこまでだった。
がちゃり、と扉の開く音がし、振り向いた瞬間、
「…………」
「…………」
母が現れた。鬼の形相だった。
「アニカ」
「…………っっっ」
名前を呼ばれただけなのに、ひぃっ、とアニカは縮み上がった。寝台の向こうに隠れたい気持ちを必死にこらえて、目の前に仁王立つ女性――エリザーベト王妃を見やる。
澄んだ青色の瞳は一切の嘘を見逃すまいとするように鋭く、白い頬は穢れとは無縁と言わんばかりに輝いている。細い肩を流れ落ち背中を覆う黒髪は豊かに波打ち、目の前の女性を一層引き立てていた。
立っているだけで、威圧感がすごい。その手には、アニカにとって曰く付きの羽扇が、しっかり握られている。
「お、おはよう、ございます」
震える声でどうにか朝の挨拶を告げる。が、そんなものに用はないと言わんばかりに、ピシャッと羽扇が音を立てた。びくぅっ、と身構える。
「お前、昨日倒れたそうね」
「え?」
叱責が来るかと思っていたアニカは、予想外の言葉に目をぱちくりした。思わず扉の横に控えるニコに視線を向けると、こくりと頷かれた。
つまり、記憶が曖昧なのも、いつの間にかジーラに介抱されたらしいのも、気を失ったかららしい。男性が、怖くて。
「もう平気なの?」
「はい」
母の気遣わしげな声に、余計申し訳なさが募る。言い訳のしようもない。何故母が知っているのかという疑問はなかった。ニコが報告しないわけはないし、そもそも報告しなくても知っているのが母だ。アニカはすぐさま謝った。
「ごめんなさい……」
「謝るということは、自分の非を認めて心を入れ替えるということね?」
「うっ……」
あまりの至論に、二言目なのにもう言葉に詰まる。
「で、でも、頑張って、皆さんとお話ししようとは、」
「その結果気絶したと?」
「すみませぇぇんっ」
反射的に二度目の謝罪をしていた。ジーラと話し、もう少し頑張ってみようと思ったことを伝えたかったのだが、母の眼光の鋭さの前に、言い訳じみた言葉は全て引っ込んでしまった。好きで気絶したわけではないのだが。
「相変わらず……ここまでお膳立てをしてもなお、どんな殿方でも怖いというの?」
実際には婚約者候補たちではなくイアシュヴィリ伯爵がきっかけだったのだが、それまでの気苦労や寝不足の原因は、間違いなく彼らだろう。どうにか反論を絞り出すが、
「そ、そこまでは……ミリアンさんや、マルティとは少し話が出来るようになったし、」
「では手を繋げるのね」
「無理ですすみません……」
あえなく撃沈した。
最終目標は並んでおしゃべり、ではない。手を繋ぎダンスを踊り、婚約式をして最後には一緒の家に暮らすことだ。母と自分の目指すものが違い過ぎて、アニカは反論にすら意味がないと思い知らされた。
落ち込むアニカを見下ろして、母は複雑な溜息を零す。
「まだ始まって一週間ほど。今すぐ結果を出せとは言わないわ。けれど、お相手にも無限の時間があるわけではないのよ。期限は残り一週間と思っておきなさい」
「はい……」
あと一週間で何かを変えられるとはとても思えないが、アニカには頷くしかない。もし出来なかったらどうなるのだろう、という疑問は、すぐに続く言葉が解決した。
「もしその間に一人の殿方を選ぶか、男性恐怖症が治せなかった場合、
「はい……はいぃっ?」
それはもうほぼ不可能です、と思いながら聞いていたら、とんでもない単語が出てきて声が裏返ってしまった。
春祭りの武闘大会と言えば、騎士団から王立学校の有志まで、腕に覚えのある者たちが参加して優勝を目指す剣術大会のことだ。一般市民からも参加を募り、五日間かけて予選から本戦までが行われる。
始まりはおよそ五百年前。シルヴェストリ王国最悪の魔女と呼ばれた女王クィルシェを討った
優勝者には褒美として、国王が何でも一つ願いを叶えてくれるということになっているが、何でもというだけあって実は頓智問答の側面も強い。過去には平民出身の参加者が優勝し、爵位を願い出たところ、「では功績を立てる機会を与えよう」と返されたこともある。余談だが、その平民は本当に戦に出て戦功を上げ、副将軍にまで上り詰めた。
殆どは頓智問答に負けて副賞の賞金と名誉を得るだけだが、それでも本気な参加者も半数はいる。そのせいか、参加条件に性別はないが、女性の優勝者が出たという話は聞いたことがない。
「まま待ってください、お母様! それでなぜそんな話になるのですかっ?」
関連性が一つも見えず、思わず問い詰める。と、冷たく見下ろされた。
「チャンスを与えようと言っているのよ」
「え?」
「武闘大会の褒美は、優勝者の願いごとを何でも一つ。もしお前が優勝したなら、その時はどんな願いも聞くことができる」
「そ、それってつまり……」
話の行く先が見えてきて、アニカは驚いた。まさか、母はアニカが優勝したなら、今回の婚約者問題を終わらせてもいいと言うのだろうか。母が許すなら、アニカはきっと願うだろう。
そっとしておいてほしい、と。出来るなら一生、男性とは関わりたくない、とも。
母はそれをずっと許さなかったはずなのに、一体どういった心境の変化だろうか。
しかしその疑問を口に出す前に、母の強い言葉がそれを押し留めた。
「現状に不満があるのなら、自分の実力で打破なさい。何もしないことが、最も愚かしい」
「……はい」
嵐のように現れた母は、嵐のように去っていった。残ったニコは、恭しく低頭したまま、剣帯と短剣を差し出した。
「……
受け取りながら、駄目元で聞いてみる。やはり首を横に振られた。
「のちほど、婚約者候補の殿方にも大会参加の希望が伝えられます。それぞれ、この一週間に優勝を目指し励まれるでしょう」
「そう、だよね」
ニコの言いたいことは分かった。彼らが鍛錬するように、もう三年も引きこもっているアニカにも練習が必要だ。だが一人で出来る練習にも限度がある。
アニカはまだ残る戸惑いをおして、まず大事なことを確認した。
「ちなみに、ニコは相手してくれる、とか」
「ありません」
「ないよねー」
ささやかな望みは儚く散った。
「練習相手が必要であれば、婚約者候補の中からお好きにお選びください」
「そんなこと言われても……」
部屋着に剣帯を着け、抜き身の短剣を手の中でくるくると弄びながら嘆息する。当日は仕舞いっぱなしの長剣を使う予定だが、それには手合わせが必須だ。
ニコが相手してくれないとなると、ラズかラウル辺りだろうか。
(……出来る気がしない)
新しい希望が見えたはずなのに、前途はやはり多難だった。
◆
「っていうことがあったんですよぅ」
母に武闘大会出場を強制された午後。侍従長のミリアンに部屋にこもると伝えたアニカは、当たり前のように窓から抜け出し、北の庭園にいた。
短剣を突いたり放り投げたりしながら、基礎練習の感覚を呼び起こす。そこにふらりとジーラが現れ、半泣きで飛びついた。しかしなぜか悲鳴を上げて逃げられ、アニカはごめんなさいと事情を説明したのだ。
「それで、ドレスに不釣り合いな剣帯なんかしてるのか」
「いつもはジーラさんが着るような前掛けの下に隠れるようにしていたんですけどね」
「ちょっと待て。王女なのにお仕着せを着るのか?」
「いざという時に顔を隠すのに、前掛けが丁度良かったんです。だけど今、取り上げられちゃっていて」
「絶対、侍女の前掛けはそのためにあるわけじゃないと思うぞ」
冷めた目で見られたが、今のアニカはそれどころではなかった。大会に抵抗はないが、対戦相手はほぼ全員男だ。しかも基本は剣が多いが、武器は自由だ。遠距離戦でしかける者もいれば、接近戦を得意とする者もいる。
「打ち合わないで勝てる方法はないでしょうか……」
「打ち合わなくて勝てるのは女王クィルシェくらいだ」
「ですよね……」
ずっと魔女クィルシェのことは苦手だったが、今ばかりは魔女の力だけでもこの身に顕現しないかと都合のいいことを考える。が、当然花壇の若葉はそよとも動かない。
更にずーんと沈んでいると、ジーラが見かねたように言葉を続けた。
「打ち合うのが嫌なら、回数を減らせばいいだろう。それこそ、分裂していた東西を再統一した賢王ヴァシリー五世みたいに」
確かに賢王ヴァシリー五世は、当時帝国の植民地として支配されていた祖国を取り戻すため帝国勢力と戦う中、一太刀で三人ずつ倒したという逸話を持つ剣豪としても有名だ。しかし彼は四百年前の人物でありながら、馬の耳にまで背が届くほどの巨漢だったという記録がある。十五歳でも更に小柄なアニカには、圧倒的に腕力が足りていなかった。
「腕立て三百回から始めようかしら……」
「何故そうなった!?」
現実的な可能性の第一歩として思案したのだが、何故かジーラに驚いた声を上げられてしまった。小首を傾げて、自分の思考回路を声に出す。
「一振りで三人は無理でも、一太刀目で相手を倒せば、向かい合っている時間が減ると思って」
「……女が真剣にそんなこと考えるなと言いたいところだが、殿下なら出来そうな気がするから困る」
「だって、名案ですよ! 相手が動く前に仕掛けて、それで仕留めちゃえばいいんですから!」
そうだ。元々男性が怖くなったのも、打ち合う間に不意を突かれ、押し倒された結果だった。それが怖くて手合わせも出来なくなったのだから、大会ではそれをされないように先手を打てばいいだけだ。
「さすがはジーラさんです! いつでも私に光明を与えてくれます!」
「そんなものを与えた記憶は一度もない」
込み上げる感銘にジーラの手を取ろうとしたら、ひょいっと逃げられてしまった。謙遜されるとはさすがジーラさん、とアニカは一人納得する。しかし続く言葉に、アニカは嫌でも現実を突き付けられた。
「じゃあ、三年前よりも強くなってるんだな?」
「うっ」
三年前までは、アニカは同年代の子供たちの中では常に上位だった。それでも大の大人では大抵押し負けた。あの時よりも腕力はついたかもしれないが、技術に関しては確実に衰えている。
「それが、練習相手がいなくて……」
結局問題が堂々巡りして、アニカは再びベンチに沈む。
「ニコ・メルアは、確か一緒に王立学校で剣技を受けていただろ」
ジーラが思い出したように言った言葉に、アニカは少なからず驚いた。アニカのことは王族でもあり覚えている者も少なくないが、ニコに関しては技術は高かったのだがあまり話題にならなかったはずだ。
「よくご存じですね」
「! あ、あぁ」
「ニコも私と同じくらい強いのですが、今回ばかりは練習相手を婚約者候補の中から選べと言われて」
「なるほど、それでか」
ジーラがふむと頷く。ようやくアニカがここまで落ち込む理由が分かったという感じだ。そんなジーラの仕草を見て、アニカはずっと気になっていたことを聞いた。
「……ジーラさん、付き合ってくれませんか?」
「は? ……はぁぁぁあッ!?」
ぐりん、とこちらを向いたジーラが、一拍遅れてベンチから飛び上がった。珍しく顔を赤くし、目を白黒させている。
「おおおまっ、つき、付き合うって、」
「ジーラさんも、剣を学ばれているんじゃないですか?」
「いきなり何を――は? 剣?」
「体つきもしっかりしてるし、何より動きにキレがあるというか……だから、剣の練習に付き合っていただけたらと」
はにかみながら、お願いする。ジーラと剣の練習ができれば、合間に相談もできるし、一石二鳥だ。そう思っての提案だったのだが、見上げると、
「……え? えっ?」
ずももももっ、と効果音がしそうな面相で、ジーラが座るアニカを腕を組んで仁王立ちで見下ろしていた。
どこでジーラの怒りを買ったのかが分からず、今度はアニカがジーラを見上げながら目を白黒させる番だった。
「あのっ、あの」
威圧感が凄いのだが、何がいけなかったか分からないアニカには謝罪も言い訳も出てこない。そんなアニカがいい加減憐れに見えたのか、ジーラは長い沈黙の果てにはぁぁ、と大きな溜息をついて腕組みを解いてくれた。
「お――ワタシは、練習相手にはなれない。その侍女頭が言う通り、婚約者候補の中から選べ」
「そうしたいのは、山々ですが……」
「相互理解、なんだろ?」
もう怒気はどこかに消えたのか、ジーラは真剣な眼差しでその言葉を口にする。そうなるともう、アニカも頑張らなければと思い、「……はい」と小さく頷いた。
◆
ジーラにああ応えたものの、いざトゥヴェ宮が近付いてくると、どうしていいか分からなかった。ニコに相談して全員に集まってもらい決めるか、それとも一人一人可能性の高そうな相手から直談判していくか。
(どっちもハードルが高すぎるわ……ッ)
想像しただけで胃がキリキリしてくる。しかしこのままここで悶々としていても、またニコに探させてしまうだけだ。ミリアンが気付く前に部屋に戻ろうと足を動かした時、外回廊の陰に見知った人影が見えて、アニカは咄嗟にいつもの癖で物陰に隠れた。
(あれは……レヴィ様と、ラウルさん?)
背中まで届く艶やかな赤みがかった髪に隠れるように、少し低い位置に癖の強い黒髪が見える。内緒話でもしているのだろうか、アニカの位置からは二人の距離が随分近いように思えた。
(大会のことでも話してるのかな?)
ラウルは警護をお願いしたこともあり、それなりに剣の腕は立つはずだ。けれどレヴィは、立ち姿こそ隙がないが、実力のほどはよく分からない。
(二人も、叶えたい願いがあるのかな)
参加を強要されても、特に願いがなければ無理して勝つ必要はない。その点に関しても、全員に話を聞く必要があるかもしれない。
それはそれとして。
(どうしよう……まだどっか行かないかな)
二人がいる場所の前を通らなければ、部屋には帰れない。しかし前に一度ラウルの話を盗み聞きしてしまった罪悪感もあり、二度目はしたくなかった。のだが。
「アニカ様ー?」
遠く、ニコの呼ぶ声が風に乗って聞こえてきて、アニカは仕方なく進むことを決意する。城内に続く扉へ向け、立ち並ぶ列柱の陰を一つずつさササッ、ササッと移動する。
(こそ泥みたい……)
自分の部屋に帰るのに、さすがに少々間抜けだな思いながらも何とか扉を圏内に捉える。と同時に、二人の声も聞こえてきた。
「……たいだな、僕は。きっと良いことにはならない」
「貴様の意見など聞いていない」
「知ってる」
アニカにかける時とは随分温度の違うレヴィの声と、苛立ちを抑えていないラウル。距離は腕一本分も離れていないのに、その雰囲気は酷く険悪に見えた。
耳を塞ぐのもどうかと思いながら更に一本列柱を進むと、ラウルの眉間に寄った皺が見えた。明らかに怒っている。気付けば、頭は会話の内容を理解しようとし始めていた。
「だったら口出しするな」
「するよ。君が、自分のことを後回しにしようとするから」
「ふん。意味が分からない。どっちでも結果は同じだ」
「同じにはならないよ。父君からの提案は自発的だが、陛下へのお願いではただの圧力だ。それがどんな結果をもたらすか、想像できない君じゃない」
反論を封じるようなレヴィの言いように、ラウルが初めて一瞬の間を空けた。その時の表情は怒りというよりも、見透かされたような不機嫌さに、アニカには見えた。
「……結果は同じだ」
「君の母君にとっては、だろ」
自覚していることを白状するようなラウルの声に、かぶせるようにレヴィが言う。瞬間、ラウルの赤茶色の瞳がレヴィを射殺さんばかりに睨んだ。
「貴様は黙ってろ」
それは今までの苛立ちとは違う、明らかな敵意だった。正面から向けられたわけでないアニカですら、ぞっと頬が冷える。それでも、レヴィの声は変わらなかった。
「黙らないよ」
「話にならんな」
言下にラウルが切り捨てる。そして瞼を伏せ、そのまま歩き去ろうとしたその腕を、レヴィが取った。無理のない力でラウルを再び振り向かせ、と同時に反対の手を壁につけて逃げ場を奪う。
「なにを、」
「黙ったら、君は僕を見なくなるだろう?」
ラウルの怒声は聞かず、レヴィが強く囁く。その声があまりに切なそうで、アニカはどきりとした。見てはいけないと思いつつ、二人の額の距離は、もう拳一つ分ほどもない。
(どどど、どどどうしようっ。確かに、相手は異性とは限らないって言ってたけどっ)
咄嗟に、最初の話し合いで異性が苦手という話をした時のレヴィの言葉が脳裏を走った。
愛を語らう、異性ではない別の相手。まさかそれがラウルなのかと、思わず両手で顔を覆った時、
「ふざけるな」
バシッ、と高い衝撃音が列柱の間に走った。ラウルがレヴィの
(だ、大丈夫かな?)
怪我はしていないと思うが、ラウルが見えなくなって暫くしても、レヴィはそのままだった。けれど男性恐怖症以前に、盗み聞きしていたアニカに声をかける資格もない。
それでも、うちの一人がいなくなって、扉への難易度は下がったはずだ。諦めて進もうかと思った時、やっとレヴィが身じろいだ。ふふ、と自嘲気味の笑声が漏れる。
「みっともないところを、見られてしまいましたね」
誰にともなく呟かれた言葉なのに、アニカは先程以上に心臓が跳ねるのを感じた。自戒というよりも、まるでアニカの存在を承知して発されたもののように聞こえたからだ。
(もしかして、気付かれてたっ?)
そうだとしても、今更慌てても取り返しはつかない。アニカはレヴィの背中を注視しながら、振り返った瞬間に謝ろう、と決めた。けれどその意に反して、レヴィは髪を掻き上げる仕草をしたあと、ラウルとはまた別の方に歩き出してしまった。あ、と思う間にも、その背が遠くなっていく。
「謝る機会を、逸してしまったわ……」
二人のやり取りがあまりに深刻で、たとえ偶然でも、聞いてしまった罪悪感は強かった。婚約者候補たちがそれぞれの事情と目的をかかえてアニカの前に現れたことは、無理からぬことだとは分かっている。だからこそ、本人以外からそのことを知るのは、失礼だと思った。
「……でも謝れないぃ……」
謝ろう、と言えない自分を、アニカは泣く泣く罵った。
◆
部屋に戻ると、予定調和のようにニコに怒られた。剣の稽古相手について考えていたのだと言い訳すると、ではまず誰をお呼びしますかと真顔で聞かれた。逃げられなかった。
結局、午後に一人ずつ話す機会を用意されてしまった。マルティとは夜に話すからと言うと、今度はレヴィが一番手になった。
「剣の練習相手でしたら、ラウルをお勧めしますよ」
笑って遠慮された。勿論というか、盗み聞きの件は謝れなかった。
続いてそのラウルにどうにか尋ねると、
「俺は優勝する。他人を構っている時間はない」
思い詰めたような目で断られた。勿論以下省略。
(私ってほんとダメ……)
自分の弱さにげんなりしながら、今度はマルセルに同じ質問をした。
「喜んで! 弱くて良いなら」
こちらから断った。ということを正直に最後のラズに伝えると、
「……分かりました。引き受けます」
頭を押さえて首を振られた。
こうして、アニカの練習は始まった。
早速翌日から、王立学校時代に着用していたような男装で木剣を構えたものの、まるで打ち合いにならなかった。ラズが一歩踏み込むたびに、アニカが三歩分後ろに飛び退くからだ。ニコは黙ってそれを眺め、何故か一緒に見学しているマルセルとレヴィは微笑ましげに合いの手を入れた。拷問かと思った。
夜には大分慣れてきたマルティに泣き言を言い、翌日もまた打ち合いが出来ずにほぼ自主練で終わった帰り道、珍しく言い寄ってこないマルセルが普通に話しかけてきた。
「仮面でお互い顔を隠してみたら?」
この提案に素早く動いたのはニコで、翌日には、以前藁人形を購入した出入りの商人から二枚の面を仕入れていた。
「……それで何で俺が兎なんだ」
白と桃色で描かれた、あまり写実的でない兎の面をつけた状態で、ラズが地を這うような声を出す。それを、自身も二つの小さな穴から確認しながら、アニカは「おぉ」と小さく歓声を上げた。
「ちょっとだけ怖くなくなった気がします!」
「…………くそっ」
その日から、少しずつ打ち合いの回数が増えていった。背中側から見ても、長い三つ編みだから余計に良かったのかもしれない。掛け声も禁止してもらい、ただただ無言で木剣を打ち合う。四日目にはニコに審判を頼み、実戦形式で一通り剣を交えることが出来た。勿論アニカの惨敗だった。体中に擦り傷や打ち身ができ、あちこちが痛い。
「そのわりには、随分嬉しそうだな」
夜、久しぶりに感じる筋肉疲労にぐったりしながら寝台に倒れ込むと、いつの間にか部屋を訪れたマルティがそう尋ねた。アニカはもぞもぞと掛け布に潜り込みながら「そう?」と返す。
「男のひとはまだ怖いけど、顔をずっと見てると兎が可愛いし」
思い出して、またふふ、と笑う。どんなに剣の威圧感があって隙がなくても、兎のお面が全てを台無しにしていた。アニカも面をつけるから視野が狭くなるし、反応も鈍くなりがちだが、それは相手も同じだ。
何より、剣の稽古をしている間、不思議な既視感を感じることがあった。それが、アニカの心を少しだけ躍らせていた。
「だから、ね――アニカ殿下まで、その変な面を肌身離さず持ってるのか?」
「変かな? 見慣れると、すごく可愛いと思うんだけど」
「白と赤の狐は、ちょっと」
アニカの面は女性の派手な化粧のような独特な彩色をした狐で、鼻から上を覆う型だ。両横には真紅の飾り房がついていて、それもアニカは気に入っていた。
「これがあると、なんだか男の人も少し怖くなくなるような気がして」
距離感が狂うからだろうか。これがあれば、マルセルとでもどもらずになんとか正面から会話ができた。御守りのような気分だ。
「でもやっぱり、毎日鍛錬してる人には全然敵わないね。追いつくだけでやっと……優勝なんて夢のまた夢な気がする」
話しながら、どんどん体が温まってきた。瞼が重く、意識も微睡んでくる。
「それでも、殿下はやるのか?」
「うん……頑張りたいんだ……」
マルティの怪訝な声に、アニカは本当ねと思いながらそう答える。何だか、全てが上手くいくような気がしていた。
五日目、六日目と、アニカとラズは本格的に打ち合う練習を続けた。その間、ラウルは一度も姿を見せず、レヴィもたまにいなかった。マルセルだけが頬杖をつきながら、飽きもせず二人の練習を眺めていた。
ニコに至っては、試合形式の審判をする以外は、何故か悪戯のようにアニカに向けてナイフを投げたりしていた。
「殿下……いじめられてたのか?」
「え? 普段からこんな感じですが……」
ラズに憐れむように見られ、アニカは困惑しながら事実を述べた。
そうして七日目も、大量の擦り傷と打ち身をこさえて練習を切り上げた。寝室に戻り、
「疲れたぁ~」
実に三年ぶりの心地よい疲労に、くたりと長椅子に横になる。足に疲れがきている、と思いながらふくらはぎをさすっていると、断りの声もなく扉が開いた。
「随分とお疲れみたいだね。僕がさすってあげようか?」
「! マ、マルセル様……っ」
マルセルの突然の出現に、アニカは一拍遅れて長椅子の奥で身を硬くする。そのまますぐに窓へと逃げなかったのは、単純に油断だった。練習が始まってから、マルセルが甘い言葉で近付いてくることもなくなったし、何よりアニカも抵抗がついたような気がしていたからだ。
けれど後から思えば、マルセルはずっとこのタイミングを待っていたのだろう。一瞬の迷いが判断を遅らせた。その間に窓への逃走経路を塞がれ、アニカは最も距離のある寝台脇へと走る。しかしそれが良くなかった。
「女の子はすぐ疲れたって言うからね。得意だよ」
ゆっくりと一歩ずつ近づきながら、マルセルが優しく笑う。アニカは壁まで逃げて、必死で首を横に振った。
「けけ、け結構ですっ」
マルセルと扉との距離を目測しながら、走って逃げられる確率を頭の中で計算する。けれど一割でもその腕に捕まる可能性が見えて、アニカは走り出せない。
「女の子がこんなになるまで頑張って……見ていて可哀想だよ」
「そ、それは、剣の稽古だから、当たり前で……っ」
面、狐の面があれば、と長椅子の辺りを探す。しかしそれは逃げた反動で、長椅子の足下――マルセルの近くに落ちていた。
マルセルが更に距離を詰めてくる。
「ほら、折角きれいな顔にも、傷ができてる」
「ッ!」
マルセルの長く綺麗な指が、艶っぽくアニカの頬を撫ぜる。ぴり、とした痛みが走ったのは、傷に触れられたからか。それとも。
「やっ――」
考えるよりも先に、寝台を飛び越えて逃げようと床を蹴っていた。だがその足を痛い程の力で掴まれ、そのまま寝台の上に顔面から倒れ込む。それでも足掻いて逃げようとしたその上に、マルセルが追いついて両手首を押さえつけた。はっと目を開いて肩越しに振り仰いだ時には、アニカをすっぽりと覆うように、マルセルの体もまた寝台の上に上がってきていた。
「逃がさないよ」
「――――ッ!」
すぅ、と細められたマルセルの碧眼に、アニカの蒼白な横顔がはっきりと映り込む。金糸のような髪がさらりとアニカの頬にかかり、ぞくりと全身に寒気が走った。
「こんなにいっぱい傷を作ってまであんな大会に出なくても、僕なら君を助けてあげられるのに」
「……は、はな、して……ッ」
マルセルが、鼻先が触れそうな程の近さで囁く。生暖かい吐息が耳朶に触れ、息をするのも怖かった。
「怖い? こんなこと、早く終わらせたい?」
それを見透かしたように、マルセルが優しく問う。会話の内容なんて、少しも頭に入ってこなかった。ただ頷く。
「だったら僕を選びなよ」
「え、らぶ……?」
涙が、勝手に溢れていた。恐ろしさに、呼吸がどんどん早く短くなる。
「妃殿下が言っていたでしょ? アニカ姫が僕を選べば、こんな茶番はすぐに終わりに出来るんだよ?」
何を言われているのか、よく分からなかった。ただマルセルの体温が、香水が、手首を掴む熱と痛みが、アニカに首を横に振らせた。いやいやと、駄々をこねる幼子のように、ただ必死に涙を散らして首を振る。
「おねが……はな…て……ッ」
「……仕方ないなぁ。あんまり手荒なことはしたくないんだけど」
マルセルが困ったように眉尻を下げる。いつもと同じはずなのに、背中にのしかかる細身の体が膨らんだようにさえ見えて、アニカは頭が真っ白になった。逃げられない、と本能的に恐怖する。
甘ったるい匂いに、頭が痺れる。と同時に、くらりとした。
(な、なに……?)
「ほら、僕の目を見て」
マルセルが
(怖いから……? でも、これは……)
意識が、歪む、ような。
「男への恐怖なんて、味わってしまえば案外あっさりと消えるものだよ」
舌が痺れそうなほどに甘い声音で、マルセルが毒を吐く。思考が、どんどん制御できなくなる。その、刹那。
『貴女のために、貴女を殺します。さようなら、……俺の最愛』
脳裏に、知らない男のひとの声が閃いた。
「!?」
(な、なに今の……っ?)
自分に向けられているものだとは、はっきりと分かった。けれどアニカは知らない。こんな隠した痛みに張り裂けそうなほどに切なく、けれど糖蜜がけの
「大丈夫。優しくするから」
マルセルが、耳元で吐息とともに囁く。違う、と思った。
彼はこんなことは言わない。
(…………彼はって、)
誰のこと、という思考はけれど、首筋に湿った何かが触れたと気付いた瞬間、消えた。
「――きゃあああああ!!」
喉が灼けるような悲鳴を上げて暴れる。拘束された両腕が痛くて、身を捩ることすらまともに出来なくて、それでもアニカは全身で暴れた。ここに短剣があれば、迷わず喉笛を掻き切っていただろう。
「暴れても無駄だよ」
マルセルの足が、アニカの暴れる足を封じるように押さえ付ける。背中に当たる硬質な体が、そこから漂う男の匂いが、絶望を思わせて。
「男女の力の差くらい、分かるで――」
「離れろ糞野郎ッ!」
ドゴッ、と鈍い音がすぐ頭上でして、ふっと重圧が消えた。
「っ?」
何が起きたのか分からなくて、アニカは止まらない涙のまま目を見開く。慌てて体を起こして引き寄せると、目の前に、マルセルの代わりに、ラズが立っていた。拳を振り下ろした格好で、肩で息をしている。その目が、ぎらりとアニカを振り返り、
「だい――」
「ッ!」
びくりっ、と体が跳ねて、次にはもう走り出していた。
◆
空色のドレスが、風に舞うように窓の向こうに消える。一瞬だった。けれどその一瞬合ったヘーゼルの瞳と頬には、大粒の涙がいくつも零れていた。
アニカはいつも泣きそうな顔をしていたけれど、いつだってギリギリで堪えていた。あんな風に、壊れたように泣くのは、初めて見た。
「アニカ!」
気付けば考えるよりも先に、アニカを追いかけてラズも同じ窓から飛び出していた。二階の高さから一足飛びで地面に着地する。だがその時にはもう、トゥヴェ宮の外壁の向こうに消えようとするアニカの背中しか見えなかった。
(速い)
半日剣の稽古をしたあとの十五歳の女の子の速度ではない。疲れていないのかという以上に、たった数日で、三年前の感覚を取り戻しているようだった。
ラズも本気で走り、何度も視界から消えるアニカを追って辿り着いたのは、北の庭園だった。アニカが部屋に籠るたびに、別の部屋に隠しておいた侍女のお仕着せを引っ張り出しては様子を見に行っていた場所。
今はジーラのお仕着せは持ってきていない。一旦引き返して取りに戻るか、という考えはけれど、木々の向こうに声を殺して泣く背中が見えて、一瞬で吹き飛んでいた。
「アニカ」
いつものベンチに縋りついて泣き伏している少女の背に、無意識に声をかける。そして次に足が動きそうになった時、
「! ジーラさん……ッ」
先にアニカが顔を上げた。途端、ラズは動けなくなった。
(しまっ、何で声なんかかけてんだ俺は!)
戻ってきた理性に激しく突っ込まれても、アニカはベンチから跳ね起き、木々の壁の向こう側に駆け寄ってきてしまった。
「ジーラさん、助けてッ。私もう……もう……!」
小さな庭園を囲う背の高い生垣に縋りつくようにして、アニカが涙声で訴える。大会の話が出た時のように、走って飛びつきたい衝動を必死で堪えているようだった。けれどラズはその木の陰から出られない。震えて止まらないその小さな肩を、そっと抱きしめて受け止めてあげることは出来ない。ラズが、男だから。
「ジーラさん、私、やっぱり出来ない……っ」
アニカが、ラズの隠れる生垣の下に膝をついて、止まらない涙を拭う手もなく泣き続ける。
「怖くて、男のひとが、怖くて……ッ、もう話したりとか……出来ないよぉっ」
うぅぅ、ひっく、としゃくりあげる。その様は、もう第二王女とかかつての剣の申し子という肩書が全て無意味になるほどに、ただ小さな女の子だった。
「アニカ、殿下」
ラズの今は、抱きしめてはあげられない。だからと言って、このまま黙って去ることなど出来ない。せめて言葉だけでも、アニカを慰めてあげたかった。
「怖いなら、もうやめてもいいよ。殿下はよく頑張った。三年前からずっと、殿下は頑張ってたよ」
「ジーラさん、知って……?」
「ニコ・メルアに守られながら、何度か社交界に顔を出したこともあったろ。妃殿下の勧めで、侍医や専門家とも話したってのも聞いた。そいつらの意見で、殿下が怖がらない男を探すっていう時も、それら全部に、いつだって殿下は逃げなかった。それは凄いことだと、お――ワタシは思うよ」
「そんなに、知っていたんですか……」
静かに、穏やかに諭すように、ラズは今まで見聞きしてきたことを口にする。それはアニカが王立学校から突然消えて以降、心配するラズのために兄姉や乳兄弟が集めてくれた情報だった。その貸しのせいで今回の婚約者候補の話を頭から蹴ることが出来なかったのだが、今はそれで良かったとも思っている。
自分がいない間にアニカがこんな目に遭っていても、側にいなければ助けてやることも出来ない。そんな思いは、もう二度と御免だ。
「いつかは治さないといけないかしれないけど、少なくともあんな殿下の気持ちを考えないような糞野郎が相手である必要はない」
「…………はい」
思い出して語尾が強くなるラズに対し、木々の緑に隠れたアニカの声には、少しだけしゃくりあげる気配が消えていた。それに少しだけ安心して、難しいと承知しながら気休めの言葉を足す。
「だから、あんな奴のために泣くな」
「……はい」
小さな返事が上がり、涙声もどうにか引っ込む。心の底から良かったと思いながら、次はひとまず気付かれる前に引き上げようと「それじゃあ」と声を上げた時、
「待ってください!」
アニカの切実な叫びに引き留められた。
「お願いします、もう少し……顔を見て、お話ししてもいいですか?」
「そ……れは、」
やはりそうきたか、とラズは言葉に詰まった。ジーラは侍女なのだから、今は忙しいと言って断ることは簡単だ。けれど今のこの状態のアニカを一人にするのは見ていられないし、もし別れた後でまた変な男に会ったらと思うと気が気でなかった。
(……ど、どうしたらいいんだ!?)
かつてない程の板挟みに、ラズは全身に冷や汗を掻きながら硬直した。希望と現状が真っ向から対立している。その葛藤がいけなかった。
「ジーラさん?」
がささっ、と足元で大きく木々が揺らぎ、アニカが下から覗き込んでいた。
(しまった……!)
完全に、目が合った。真っ赤に泣き腫らしたヘーゼル色の瞳が、みるみる大きく見開かれる。
「…………ラズ、様……?」
何故ここに、という声が、その戸惑いの吐息の中から聞こえるようだった。そのまま瞳が左右に動き、「ジーラ、さんは……?」とどこか掠れた声が続ける。
ラズは思わず一歩二歩と後退していた。ラズは嘘がつけない。それでも、正直に言うことが出来るはずもない。瞬間的に頭が真っ白になり、「あ、いや、あのっ、」と意味のない言葉ばかりが零れる。そして出てきたのは、
「ジーラなら、今さっき、向こうに走って行ったと……」
ラズにしては会心の言い訳だった。だが、
「……ジーラさんを、ご存じ、なんですか」
アニカが、震えた声で問う。そこで失言に気付いても、もう遅かった。
「それ、は……そう、彼女は、城の侍女だろ? だから、」
「同じ声……」
「!」
アニカがぼそりと呟いた。信じられないというように。アニカは続ける。
「同じ瞳、同じ髪色、同じ……」
「アニカ殿下」
それ以上の言葉が怖くて、ラズは拒むように名を呼ぶ。けれどアニカは、続けてしまった。
「同じ……ひと?」
愕然と、問う。赤く腫れた白目と、乾ききったヘーゼル色の瞳が、うそつき、と言っていた。
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