内緒の屋根裏部屋

陽月

内緒の屋根裏部屋

「ねえ、お母さん。川瀬かわせのおばあちゃんは、今度いつ行くの?」

「お盆かな」

「もっと早くならないの?」

「どうしたの、急に?」

「ちょっと、おばあちゃんに会いたいなって」

「それだけ?」

「うん、それだけ」

「お父さんが帰ってきたら、連れて行ってって頼んでみなさい」


真由まゆが、お母さんとこに行きたいって言いだしたんだけど、何かありそう。上手く聞き出してくれない?】

【了解】


「お父さんあのね、川瀬のおばあちゃんに連れて行って欲しいの」

「どうした急に? お小遣いでも欲しいのか?」

「違う、そんなんじゃ」

「なんかありそうだな。理由も教えてくれないのに、連れて行けないな」

「お母さんには内緒にしてくれる?」

「わかった」

「屋根裏部屋に行きたいの?」

「屋根裏部屋?」

「ほら、おばあちゃんにあるでしょ、はしごで登っていくところ」

「ああ、あそこか。でも、なんで行きたいんだ?」

「本で読んだの。屋根裏部屋で不思議と出会う話」

「なるほど。それなら、お母さんに内緒にしなくてもいいんじゃないか」

「お母さんはダメって言うもん。本の中でも、主人公がお母さんに怒られていたし。だからね、お母さんには内緒」

「わかった、わかった」

「ちゃんと理由言ったんだから、連れて行ってよ」

「そうだな、おばあちゃんにも都合があるから、確認してからな。あと、ちゃんといい子にしてたら。今日はもう寝なさい」


「真由はなんだって?」

「お義母さんの屋根裏部屋に行きたいんだそうだ」

「屋根裏部屋?」

「ほら、土間から梯子で登るところがあるだろ、そこを屋根裏部屋だと思ってる」

「ああ。あんなのただの物置よ」

「でも、真由にとっては屋根裏部屋で、不思議と出会える場所なんだ」

「まあ、そのくらいなら。お母さんに確認してみる」

「頼むよ。あと、真由とお母さんには内緒って約束したから、そっちもよろしく」

「なんで私には内緒なのよ」

「ダメって言うからって。あと、本の主人公もお母さんに怒られていたらしい」

「もう、仕方ないわね」


『もしもし、お母さん。私、美由紀みゆき

『美由紀? どうしたの急に』

『真由がね、お母さんに行きたいって言いだしてて』

『おばあちゃんに会いに来てくれるの? まあ嬉しい』

『残念、真由のお目当ては屋根裏部屋なのよ』

『うちには、そんな立派なもの無いよ』

『物置に梯子で登るでしょ。それで、屋根裏部屋だと思ってるみたいで』

『なるほどね。高いのが怖くて、ちょっと登ってみては、すぐに降りていたのに』

『まあ、今回も登り切れるかは分からないんだけど。それで、ちょっと掃除しておいて欲しいのよ』

『はいはい。でも、そんなすぐには無理だから、来るなら来週にしてよ』

『ありがとう。それじゃあ、来週の日曜にじゅんさんに真由を連れて行ってもらうから』

『あんたは? なんか用事でも?』

『私には内緒で、私は知らないことになってるの』

『おやまあ、仲間はずれかい。私も、知らないことにしておいた方がいいんだろうね』

『そうね、こっそり行きたいみたいだし。迷惑かけるけど、よろしく』


「ねえねえ、お父さん。おばあちゃんはどうだって?」

「今週は用事があるけど、来週の日曜ならって」

「ホント、ありがとう。じゃあ、来週の日曜ね」

「ちゃんといい子にしてるんだぞ」

「わかってるって」

「二人とも、何をこそこそ話してるの? あんた達は自分の用意だけしていけばいいけど、私はその後の片付けもあるんだから、ちゃっちゃと行動してよ」

「怒られちゃった」

「怒られちゃったね」

「また? なんなの二人でこそこそ。淳さんは早くしないと、電車に乗り遅れるわよ。真由も、いつまでのパジャマでいないで、さっさと着替えてきなさい」

「はーい」

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内緒の屋根裏部屋 陽月 @luceri

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