『史記』の世界を杉浦ヒナタさんの筆力で楽しむ!

 2千年前の中国で、司馬遷によって竹簡に書かれた『史記』が、真実のみを記した歴史書なのか、それともそうではないのか。その追及は学者先生に任せよう。私たち<カクヨム>の読者は、作者が『史記』からインスピレーションを得て作り上げた物語りを、笑い、時に涙して楽しめばいいのだ。
 だから、あの劉邦のもとで活躍した軍師・張良が女性であっても、虞姫が垓下の戦いで項羽とともに死ななくても、それはそれでよい。大切なのは、彼女たちそして彼らたちが、小説の中でいかに活き活きと描かれているかに尽きる。
 作者・杉浦ヒナタさんの短く端的な文章は、登場人物たちそれぞれの性格をくっきりと浮かび上がらせる。練りに練った構成は、2千年前に実際にそういうことがあったに違いないと、読者を納得させる。また、主人公の女性たちが『史記』の中でも高潔な志を持った男たちと結ばれ、最後には幸せになるという結末も、作者の繊細な心配りで、読後の余韻も心地いい。

 このレビューは、『兵書に淫する姫~張良異伝~』『兵書に淫する姫~少女軍師 張良~』『楚歌の静寂 ~虞姫 別伝~ 』の3作をまとめたものです。ぜひ、3作を続けて読まれることをお勧めします。

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