二つの事件に奔走する、刑事たちの群像長編。

作者さまの書かれているシリーズ最新作。

メインとなる二人の刑事は、不器用で童顔の鍋島さん、屈折イケメンの芹沢さん。
彼らの他に、恋人や友達、部下や上司などが登場しますが、皆それぞれに個性と魅力の溢れる人たちばかりで、ちょっとしたセリフや地の文で書かれる独白などから、読み手の中にすっとその人物像が立ち現れます。

今回は同時に二つの事件が起こり、その間で彼らが奔走することになるのですが、解決までの道のりが彼らの足で地道に行われていく様子をじっくりと読むことができます。
そこに絡まるのは、人が人に向ける感情。その真相に迫っていく中で描かれる登場人物たちの心情はとてもリアルで、物語の結末に示される彼らの新しい一歩には応援の声と拍手を送りたくなります。

一見不可解な事件が綺麗に収束していく様子に感嘆しつつ、好きなキャラクターを見守りながらの30万字。贅沢な読書時間を過ごすことができる群像長編です。