恋人の死を止められなかった男は、死にたがる見知らぬ少女を救えるのか

恋人の自殺を止められなかった過去を持つ、主人公の矢知順。
彼は海辺のゴミ拾いをしている最中、砂浜に倒れている少女を見つけます。
聞けば少女は、凍死したくて自らそこに倒れていたという。
自殺した恋人が重なって見えた順は、少女に手を差し伸べることにするのでした。

注目は、主人公と少女が急速には接近しないところです。
その距離感ゆえに、物語は主人公の内面にもフォーカスがあてられます。
少女との出会いによって広げられた主人公の心の傷。
その傷の中を覗き込むことができるのもこの小説の楽しみです。
もちろん主人公だけでなく、少女のことも気になります。
かつて恋人を救えなかった主人公は、少女にどのような救いを与えることができるのか?
どのように決着するのかドキドキしながら読める小説です。