人間が当たり前に持つおかしな部分。

主人公は非常に奇妙なストーカーにつきまとわれています。
ストーカーは部屋の新聞受けにBLの同人誌が投函してきます。
しかもそのBL漫画のモデルは主人公自身。

変なストーカーの行動に悩まされる日々。
そこに映画の心得がある知り合いが混ざってきて、物語は加速します。
ストーカー氏を脚本家に据え、主人公は主役となり、BL映画を撮る羽目に。

そして主人公は、未知の世界を覗くこととなります。
いえ、未知と言ってもそれはBLの世界だけを指すわけではありません。
彼が今まで知ることのなかった、人々の人生や気持ちが露わになっていくのです。

知らない人の人生にはもちろんのこと。
知っている人の人生にも、母親にも父親にも、彼にとって未知の領域があります。
おかしなきっかけで始まった物語は、彼に様々な人のおかしな部分を見せつけます。

人間のおかしな部分を強調しているような物語で、そこに大きな魅力があるのです。

この物語には、おかしな人に見える人がいっぱい出てきます。
でもその人たちはコメディチックに変な人をしているわけではないのです。
むしろ生々しさや人生を感じさせる文章へとつながっていく描かれ方をしています。
読んでいくうちに、「普通に接していたら表に出てこないだけで人間は誰も彼もおかしな部分を持っているのかもしれない」とさえ思えてくるんですね。

なんだか物語の核心を語っているふうのレビューですが、実は終盤の内容には全然触れておりません。
ストーカー氏や知人の情熱に巻き込まれた主人公がどんな目に遭うのか、ぜひお確かめください。