解説? ワトソンの回顧録について

余談

 今回発表された「ジョン・H・ワトソン博士の回顧録」という原稿は、ワトソンと交遊のあった編集者の遺品から発見されたと言われている。

 発見当初は、「ワトソン、幻の原稿発見か」とにわかに世間が沸いたものの、内容が内容なだけに皆が口を揃えて「えぇ……」と困惑した。


 そして、一部のシャーロキアンは──。


「僕らは『ホームズ、ワトソンを実在の人物であると信じ込んでいる変な奴等』と思われているが、この回顧録がそれを否定してくれた」


「ワトソン達は架空の人物ではない。タイターの『エレクトロバイオメカニカルニュートラルトランスミッティングゼロシナプスレポジショナー』によって、実在した事実や記憶の多くを消し去られ、記録が散逸して、歴史に埋もれてしまったのだ」


 と声高々に宣言し始め、さらに世間一般に困惑を広げた。


 しかし、現在。


「記憶を消されたのにも関わらず、記憶を消される瞬間のことを記述する部分があり、明らかに時系列的に矛盾している」


 と、単純なミスを指摘され、世の中に余多ある出来の悪い創作の一つだと結論づけられている。


 ■完■



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グラフィティ〈最後の一葉〉を巡る狂騒 緯糸ひつじ @wool-5kw

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