今主催中のイベント「カクヨムでSFを創る者たち【短編・中編編】」に参加してもらった作品で、脳機能を題材にしたSFを二つピックアップ!
記憶、情動、思考、主観など、脳に関わるアレコレを考えたくなってしまう作品を紹介します。
いろんな小説を読んでると、たまに読書体験そのものを作者にコントロールされているような感覚を受ける小説ありますよね。
この二つも、そういうものだと思いました。騙されたと思って、両方とも二話まで読んでほしいです。「おっ!」となる読書体験が待ってます。小説ができる表現の幅の広さを知りました。
ひとつめ!
「虹の彼方の何処かに/雪星/イル」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887345548 主人公は、脳のなかにある「手続き記憶」を保存する技術を開発している研究者。その技術が完成すれば、たとえば身体に染み付いた職人の技、脈々と受け継がれた伝統芸、磨き上げられた演奏の技巧を、さくっと他人に与えることが可能に。
偉大なジャズピアノ奏者の祖父と、その祖父の演奏を追い求めた姉。その二人の背中を見てきた主人公は、研究を通して「個人が一生を賭けて身に付けた技術を継ぐこと」について思考を巡らせていきます。
今まで読んでいる自主企画の作品のなかでも、「これは地続きの近未来だ」といちばん強く感じる作品でした。ピアノ演奏の描写がかっこよくて、そしてお姉さんの凄みもぐっときて、めちゃくちゃ良かったです。凄い。テクノロジーが、社会と個人にどんな作用をもたらすか。その部分が丁寧に描かれていて、伊藤計劃さん的なSFの醍醐味を味わいました。
ふたつめ!
「思念戦線/オカダケイス」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884657297 思念放射犯罪対策官(カウンターテレパス)の主人公の活躍を描くSFミステリー。
薬物中毒者が思考を周囲に撒き散らし他者を錯乱させる「思念放射」という現象に、主人公は立ち向います。
敵となる中毒者との戦闘は極めて異質で未体験の領域。小説ならでは表現がめちゃくちゃかっこいい。
実験的な作品で、脳味噌を搾られるような感覚。想像する景色が玉葱の皮のように何度も剥かれて、新たな現実を寄越される。やばい。クリストファー・ノーランの映画「インセプション」やフィリップ・K・ディックの小説「ユービック」を思い出します。超おすすめです!
「カクヨムでSFを創る者たち【短編・中編編】」
https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054922505734